アナフィラキシーは,原因曝露後急速に,複数臓器に全身性にアレルギー症状が出現し生命に危険を与えうる過敏反応であり,血圧低下や意識障害を呈するときはアナフィラキシーショックと呼ぶ。IgEが関与する・しないで病名を区別することはせず,臨床経過および症状からアナフィラキシーと診断する。
症状出現後,速やかに進行するため,臨床所見から直ちに診断して治療に移る必要がある。原因曝露の情報がなければ,皮膚・粘膜症状に加えて2臓器(呼吸器あるいは循環器)のいずれかの症状に基づき診断する。一般的に,アレルゲンとなりうるものに曝露された後,急速に症状が出現する場合には,4臓器(皮膚・粘膜,呼吸器,循環器,消化器)のうち2臓器の症状で診断する。本人にとってアレルゲンとわかっているものに曝露された場合には,血圧低下に基づき診断する。これら3種類の診断方法のうちいずれか1つを満たせば,アナフィラキシーと診断してよい。
皮膚・粘膜症状として,全身の発疹,瘙痒,紅潮,浮腫がある。呼吸器症状として,鼻瘙痒感,鼻閉,鼻汁などの鼻症状,咽頭瘙痒感や咽頭絞扼感,嗄声,上気道性喘鳴などの咽喉頭症状,息切れや喘鳴,チアノーゼなどの下気道症状が起こりうる。循環器症状として頻脈,動悸,血圧低下などがある。消化器症状として持続する腹痛,嘔気・嘔吐,下痢などがある。
原因アレルゲンとしては,食物,ハチ毒,薬剤が多く,小児に限ると食物が圧倒的に多い。
アナフィラキシーが目の前で起きた場合,直ちに周囲の医療スタッフを大声で呼び集める。臥位とさせて足を挙上し,バイタル測定,アドレナリン筋注の準備(成人では0.3mg,小児では体重kg当たり0.01mg)を行い,アナフィラキシーと臨床判断したらアドレナリン筋注を行う。末梢血管を確保して生理食塩水の急速投与,酸素吸入,バイタル測定を繰り返し,必要があればアドレナリンの追加投与,さらには蘇生処置を行う。血圧低下や呼吸不全が遷延する場合はICU管理を行う。
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