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呼吸窮迫症候群[私の治療]

No.4999 (2020年02月15日発行) P.49

石黒秋生 (埼玉医科大学総合医療センター小児科新生児部門准教授)

登録日: 2020-02-12

最終更新日: 2020-02-10

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  • 呼吸窮迫症候群(respiratory distress syndrome:RDS)の主たる病態は,肺サーファクタント欠乏による肺胞の虚脱であり,主にⅡ型肺胞上皮細胞における肺サーファクタント産生が十分でない在胎34週以前に出生の早産児に発症する。多呼吸,陥没呼吸などの努力呼吸や酸素化不良,呼吸性アシドーシスを主症状とする。成熟児であっても母体糖尿病児や感染症,気胸などに伴って二次性に発症することがある。

    ▶診断のポイント

    在胎34週以前出生の早産児における出生後早期の呼吸障害はまず本疾患を念頭に置く。診断は胸部X線写真における顆粒状陰影,気管支透亮像などの所見やマイクロバブルテストなどによるが,超早産児などでは高度の酸素化障害を根拠に,RDSとして蘇生時に治療されることが多い。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    典型的なRDSであれば気管内肺サーファクタント補充療法が有効であり,その効果の高さから唯一といってよい治療である。現在の主たる議論は,治療のタイミング,投与方法,治療後の人工呼吸管理,などについてである。

    【投与のタイミング】

    我々は,より早期のRDS治療がその後の呼吸予後を改善させるという考えから,気管挿管後の高度酸素化不良(FiO2 0.4以上)を示す早産児に対しては,蘇生時にサーファクタント補充療法を行っている。マイクロバブルテストや胸部X線写真による診断前の介入であることから,投与時の反応をみながら効果不良または増悪があれば,直ちに中止している。

    【投与方法】

    現時点では,気管挿管によるサーファクタント補充療法が一般的であるが,近年,気管挿管せずにサーファクタント補充療法を行う手法〔minimally invasive surfactant treatment(MIST)またはless invasive surfactant administration(LISA)〕1)が,児に対する侵襲を低減し,呼吸短期予後を改善すると報告されている。わが国では導入している施設は限られているが,今後対象症例の選定や手技の確立が進めば,投与方法として今後の選択肢のひとつとなりうる。

    【治療後の呼吸管理】

    高い人工呼吸器設定や長期にわたる呼吸管理は,その後の呼吸予後を悪化させうる。特にサーファクタント補充療法後は大きく呼吸状態が変化するため,SpO2モニタ,経皮的二酸化炭素分圧モニタにより連続的に呼吸状態を監視し,適時に呼吸器設定を変更(ウィーニング)していく。また,我々は,サーファクタント補充療法時にのみ気管挿管し,治療後早期に抜管してその後はnasal CPAPにて呼吸管理を行う手法,intubation-surfactant-extubation(INSURE technique)を,28週以上のRDS症例に対して行っている。

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