新型コロナウイルスについて、国内での次の「Xデー」に備えておかなければならない。
日本国内で、中国に渡航または居住していた方との接触がない方の新型コロナウイルスの感染が確認されたら、それはその方の住んでいる地域において感染が拡大している可能性を示唆することになる。この段階で国内での対策は一段階レベルが上がる。
そうした場合に何がその地域で起きるのか。2009年の新型インフルエンザ流行の際には、その地域において祭りなど人の集まるイベントの中止、学校の休校が行われ、さらに感染者への不合理な批判なども聞かれた。 国内で、新型コロナウイルスの検査態勢の拡充を求める声もあるが、こうした事態が起こりえることも我々は想定しておかなければならない。
そして、2009年の新型インフルエンザ流行時の対応と今回が異なるのは、日本が世界からどう見られているか─という点である。すでに、日本の感染者の数はクルーズ船の感染者も含めると中国本土以外の国と比較すると最も多い国である。こうしたことから、中国本土を対象に入国制限などを行っている国々が、日本国内での感染者確認により日本も入国制限の対象にする可能性があることを危惧している。日本の状況は、より正確に海外へも発信しなければならない。
いつまで対策を強化するのかも課題だ。感染症対策は、感染力と、感染した場合の重症度で評価することとなる。報道によると、日本では、クルーズ船の174名を含めると203名の感染が検査で確認された(2月12日時点)。日本の医療レベルの治療を受けた場合に死亡率がどうなるかという情報を多くの先進国が注目しているところである。
また、国内での感染例が確認された場合に、現在の「水際対策」をどうするのかも柔軟に見直す必要が出てくる。対策を厳しくすることはそれほど難しくないが、緩和するのはとても難しい。2009年の際には国会で議論になったことが思い出される。
Xデーに備えて、実際に、その地域でイベントの中止や学校の休校をするのか。出張の中止などをするのか。トラックの運転手などがその地域に行くことを拒否するなどして物流が滞ることがないのか。この段階から議論しておかなければならない。
この後、新型コロナウイルスの話題がいつまで続くかはわからないが、東京五輪・パラリンピックまではくすぶると予想される。冷静で確実な対応を実施して、世界に日本の力を発信したい。
和田耕治(国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授)[新型コロナウイルス]