百日咳菌(Bordetella pertussis)によって起こる細菌感染症で,特に新生児,乳児が罹患すると無呼吸,肺炎,脳症,肺高血圧症などの合併症をきたし重篤化する。
成人が感染すると2週間以上続く咳を訴え,小児の感染源となることが多い。特に妊婦が分娩直前後に感染すると児へ感染を伝播する可能性が高くなる。
ワクチンで予防できる病気であるが,近年国内では,4種混合ワクチンを4回接種済みであるにもかかわらず,学童期の症例が多く報告されている。その対策として,就学前,10歳代での3種混合ワクチンの追加接種が推奨されている。
新生児,乳児では,症状として,連続する咳嗽,Whooping,チアノーゼ,無呼吸など,検査所見でリンパ球増多,確定診断には,鼻咽頭のポリメラーゼ連鎖反応(polymerase chain reaction:PCR)法,Loop-mediated isothermal amplification(Lamp)法による遺伝子の同定を行う。
軽度の上気道症状があるカタル期に治療すると症状を軽減する可能性がある。しかし,頻度の高いウイルス感染症とこの時期に区別することは難しい。
典型的な発作性の咳の出る発作期に治療しても,症状の軽快は期待できず,周囲への伝播を減少させる効果しか期待できない。
治療薬の第一選択薬はマクロライド系薬剤で,アジスロマイシン,クラリスロマイシンなどが使われる。
生後1カ月未満の児へのエリスロマイシンの投与は,肥厚性幽門狭窄症のリスクを上げることが知られており,通常用いない。
2カ月を超える児で,マクロライド系薬剤が服用できない,あるいはマクロライド耐性菌であることがわかっている場合,スルファメトキサゾール/トリメトプリム(ST)合剤を使うこともある。
新生児,乳児では,無呼吸や二次性の細菌性肺炎による呼吸不全のリスク,肺高血圧による心肺不全のリスクがある。
細菌性肺炎を合併している場合,肺炎球菌,インフルエンザ菌などをターゲットとする。
有効な抗菌薬が開始され5日までは,飛沫感染対策を行う。
濃厚な接触者(同居家族)などには,予防投与を速やかに行う。投与量,投与期間は治療量と同様である。
予防としては,乳幼児期に4種混合ワクチンを確実に4回接種することと,就学前と10歳代での3種混合ワクチンの追加接種を行う。
海外では,新生児や早期乳児への感染を予防するために,妊婦の妊娠中期から後期にかけて,Tdapワクチン(通常の3種混合ワクチンの百日咳とジフテリアワクチンの抗原量を減らした不活化ワクチン,国内未承認)の接種が行われている。
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