SUMMARY
プライマリ・ケアの診療は医療資源が限られるため病歴の果たす役割は大きい。映像化されるほど詳細な病歴の再現が技術の核となるが,それを実現する重要な要素として4Cがある。4CのControlを実践するInductive foragingにより患者主体で問題空間を定義し,Descriptive questionやTriggered routineでその解像度を上げることが重要である。
KEYWORD
Inductive foraging,Descriptive question,Triggered routine
プライマリ・ケアのような広大な問題空間の中における病歴聴取は,まず患者自身から自由に話してもらうことが重要であり(Inductive foraging),続いてそうして知り得た情報をより精緻にする質問(Descriptive question)と,より診断にせまる特異度の高い質問(Triggered routine)を追加していく。
PROFILE
香川大学を卒業後,JCHO東京新宿メディカルセンターを経て,2017年より現職。研修医時代にはNHK「ドクターG」に出演,休日は全国の救急病院で武者修行を行いながら,独自の理論である三次元診断学の完成をめざしている。(勝倉)
2016年より獨協医科大学。総合診療の若手リーダーを輩出するチーム運営を続けている。専門は診断戦略。(志水)
POLICY・座右の銘
二兎を追うものは,三兎目が現れる(勝倉)・掲げた旗は降ろすな(志水)
病歴を何のために聴くのか?その大きな目的の1つは,診断の助けになるからである。病歴は診断のための情報の大きな部分を占める。診断推論のプロセスとして,現代の臨床医学において優勢を保っていると思われる考え方は,仮説演繹法と呼ばれる手法である。これは病歴や診察などからある情報を入手した時点で,いくつかの鑑別診断を想起し,さらなる情報収集(病歴聴取,身体診察,検査)を行うことにより,その可能性を評価し,1つの診断に絞り込むというプロセスである。しかしながら,プライマリ・ケアというセッティングにおける患者の問題空間は非常に広大である。そのため,医師が恣意的に集めた断片的な情報に基づいた仮説演繹法により,早い段階で鑑別診断を絞ってしまうことは,確証バイアスにも陥りやすく,重要なポイントを見逃し,間違った方向に進んでしまう危険性がある(診断の早期閉鎖)。