SUMMARY
身体所見の診断的有用性は確立していない。身体診察の前に,その所見の確率を見積もる「診察前確率」を考えてから診察する。そして,病歴・身体所見・検査のいずれに親和性のある疾患を疑うかを考えてアセスメントする。
KEYWORD
診察前確率
身体診察の前に,その所見の確率を見積もる「診察前確率」を考えてから診察する。つまり,年齢や性別,主訴,病歴,そして診察する状況から,診察前にその所見がどれくらいの確率であるかを見積もること。
PROFILE
2006年東京大学工学部航空宇宙工学科卒業,11年筑波大学医学専門学部医学科卒業,同年沖縄県立中部病院内科プログラム初期研修,13年沖縄県立中部病院内科プログラム後期研修,15年沖縄県立八重山病院内科,16年より現職
POLICY・座右の銘
ベッドサイドティーチング
若年女性が,長らく続く原因不明の頭痛で当科に紹介受診した。病歴を聴取後に,頸部に聴診器を当てると血管雑音が聴取された。その所見から,「高安大動脈炎の可能性があるので,追加の検査をさせて下さい」と伝えた。画像検査で頸動脈狭窄を認め,採血検査で炎症反応が上昇していた。その後,膠原病内科に相談し,治療が始まった。一緒に診療にあたった研修医の先生が「一生忘れません!」と驚いていた。
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伝統的に医師の技量の尺度として評価されてきた身体診察は,近年あまり評価されていないように思われる1)。
筆者の研修した医療機関は,全科が病歴と身体診察とグラム染色から導かれる臨床判断を非常に大切にしていた。そのため,医師として駆け出しの頃からその有用性を肌身で感じており,より多くの後輩に伝えたいと考え,現在,大学の総合診療科に所属させていただいている。日々医学生や研修医の先生方とベッドサイドで病歴聴取や身体診察を学び教える機会に恵まれている。