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けいれん[私の治療]

No.5009 (2020年04月25日発行) P.46

松本理器 (神戸大学大学院医学研究科内科学講座脳神経内科学分野教授)

原 敦 (神戸大学大学院医学研究科内科学講座脳神経内科学分野)

登録日: 2020-04-27

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  • けいれんとは,持続的な筋収縮(強直期)から間代的な筋収縮(間代期)へ移行する一連の発作性の運動症状である。何らかの原因で大脳皮質の細胞(ニューロン)が過剰興奮することでけいれん(専門用語では強直間代発作)が出現する。大脳の神経細胞の過剰興奮が一斉に出現すれば全身けいれんが出現する。一方,局所の過剰興奮から始まる場合は,体の一部からけいれんが出現し,その後体全体に広がる。原因としては,急性の脳障害と慢性の脳病態であるてんかんが挙げられる。脳炎,脳梗塞,脳出血といった脳そのもの,ないし電解質異常,低血糖,中毒や代謝異常など全身の病態により急性の脳障害を生じた際に急性症候性発作として,けいれん発作が生じうる。一方,てんかんでは大脳皮質ニューロンが過剰興奮する性質を獲得することで,発作性の脳症状であるてんかん発作が繰り返し出現する。てんかんでは様々な発作が出現するが,詳細は「診断のポイント」の項を参照頂きたい。これらに加えて,けいれんを呈する病態として鑑別に失神や心因性非てんかん性発作が挙げられる。

    ▶診断のポイント

    けいれん自体を医療現場〔外来,救急治療室(emergency room:ER)〕で目撃することは多くはない。目撃者からの発作症状〔けいれんの様子,チアノーゼの有無,目の様子(開閉眼いずれか)〕の聴取,患者からの咬舌,尿失禁,筋痛の有無,起床時の状態(睡眠中にけいれんが起きれば,舌や口腔内粘膜をかむことで枕に血がつく,筋痛など)などの病歴聴取といった問診が診断に重要となる。全身けいれんの前に,一側上下肢のけいれんや眼球や頭部の偏倚があれば,一側の大脳半球(けいれんや偏倚の側と対側)から出現した発作であることがわかる。全身けいれん(強直間代発作)の鑑別として,失神にけいれんを伴う病態(けいれん性失神)が挙げられる。失神による脳の低灌流から脳幹の虚血が一過性に生じ,除脳硬直と同じ機序による強直性けいれんが出現する場合がある。けいれん性失神では,けいれんの持続が数秒~数十秒と短く,もうろう状態がない点が鑑別点となる。心因性非てんかん性発作では,てんかん発作と比べ発作の持続時間が長く,頭や体を左右に揺らす,腰ふり,身体を弓なりにそらすといった不規則な運動がみられる。全身けいれんでは目は見開くか上転するが,心因性発作では閉眼することが多い。

    【検査所見】

    急性症候性発作,てんかんの原因検索を行う。血液検査(血糖,電解質,肝腎機能,血液ガス,抗てんかん薬を内服中は血中濃度,薬物中毒検査)を行い,急性症候性発作の原因やてんかん発作の再発の原因(怠薬による血中濃度低下)を調べる。全身けいれんでは,発作後にCK・NH3が上昇することが多い。けいれん性失神の鑑別に,心電図で不整脈の有無を確認する。頭部CT・MRIで急性脳障害やてんかんを起こしうる大脳皮質の病変を調べる。脳波でてんかん性放電の有無を確認する。てんかん発作の場合,発作後24時間以内の脳波でてんかん性放電の検出率が増加するため,早期の脳波記録が望まれる。

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