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爪白癬[私の治療]

No.5013 (2020年05月23日発行) P.52

常深祐一郎 (埼玉医科大学皮膚科教授)

登録日: 2020-05-22

最終更新日: 2020-05-19

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  • 爪白癬は,白癬菌が皮膚の角層の特殊形である爪に寄生する感染症である。爪甲の肥厚や混濁が遠位や側面から始まるdistal and lateral subungual onychomycosis(DL SO),爪甲表面だけが白濁するsuperficial white onychomycosis(SWO),爪甲の近位部から混濁が始まるproximal subungual onychomycosis(PSO),爪甲全体に病変が及び爪甲が肥厚し脆弱化するtotal dystrophic onychomycosis(TDO)に分類される。爪白癬はほぼTrichophyton rubrumとT. interdigitaleによる1)

    ▶診断のポイント1)

    病変部に真菌が存在することを証明することが必須である。臨床像だけでの診断は困難である。ニッパーなどを用いて爪を採取する。SWO型では爪甲表面の混濁部を削ればよいが,そのほかのDLSO型などでは混濁部と正常部の境界まで病爪を削り込んで採取する。楔型の混濁でも混濁部の最近位部まで削り込む。爪は細かく砕く。直接鏡検については「頭部白癬」の稿を参照(検体が溶解したところで,軽くカバーグラスの上から検体を薄く押しつぶして,観察する)。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    【爪白癬外用抗真菌薬】2)

    ルリコナゾール爪外用薬とエフィナコナゾール爪外用薬がある。それぞれ性質は若干異なるが治癒率はほぼ同等である。ルリコナゾール爪外用薬と比較してエフィナコナゾール爪外用薬は高価である。両者とも高濃度であり周囲の皮膚に付着すると接触皮膚炎を起こすことがあるため,周囲の皮膚につかないように塗布し,周囲の皮膚についた場合は拭き取る。

    【経口抗真菌薬】2)~4)

    白癬菌に対してはホスラブコナゾールとテルビナフィンが第一選択である。

    ホスラブコナゾールは内服後速やかに吸収され,活性本体であるラブコナゾールに変換される。吸収は食事の影響を受けず安定している。1日1カプセル(100mg)で12週間という短期の内服のため,高いアドヒアランスが維持される。併用注意薬(シンバスタチン,ミダゾラム,ワルファリン)はあるが,併用禁忌薬はない。肝機能検査はAST,ALT,LDH,ALP,γ-GTP,総ビリルビンを測定し,ASTとALTに着目し,ほかはASTとALTの値と併せて総合的に判断する。酵素誘導によりγ-GTPが上昇することがあるが,ASTとALTが上昇していなければ,肝細胞障害ではない。治療開始前に異常値がない場合,異常値がみられることの多い6~8週目で1回目の検査を実施する。ASTとALTが基準値を超えるものの100IU/L以下であれば投与の対象にでき,この場合,4週間ごとに採血を行う。いずれも開始前と比較して軽度の検査値上昇であればそのまま12週間内服を完遂できる。中等度以上の上昇の場合,休薬し,再検してから再投与を検討する。この投与アルゴリズムについては別稿5)に詳述している。

    テルビナフィンは吸収が良好な薬剤であり,1日1錠(125mg)で連続投与する。肝機能障害と血球減少,横紋筋融解に注意する。爪白癬では6カ月~1年程度の投与になることが多い。併用注意薬があるが,併用禁忌薬はない。検査項目は,血算,生化学(AST,ALT,LDH,ALP,γ-GTP,総ビリルビン,CK)で,検査間隔は初めの2回は毎月検査を行い,データに変動がなければその後は2カ月ごとでよい。

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