【国内外から本術式に関する報告が増加しており,さらなる普及と発展が期待される】
肩腱板断裂は中高年に多く発症する疾患であり,運動障害・運動時痛・夜間痛の原因となる。肩腱板断裂の治療は保存的治療と手術治療に大別されるが,腱板断裂部の自然修復は得られないため,手術治療が行われることも多い。肩腱板断裂の治療成績は,関節鏡視下腱板修復術の普及に伴い向上しているが,大断裂以上の腱板断裂における再断裂率は依然として高く,修復腱板が再断裂すると,再断裂のない症例に比べて術後成績が劣ることが知られている。
近年,当教室の三幡らは,修復困難な腱板断裂に対する新しい治療法として大腿筋膜を用いた鏡視下肩上方関節包再建術を考案し,優れた臨床成績を報告した1)2)。本術式は肉体労働やスポーツ活動への復帰率も高く,これまで治療が困難とされてきた偽牲麻痺を有する症例に対しても有用な術式である3)4)。
近年,本術式は国内外で追試され,他施設からも良好な治療成績が報告されはじめた。今後,本術式のさらなる普及と発展が期待される。
【文献】
1) Mihata T, et al:Am J Sports Med. 2012;40(10): 2248-55.
2) Mihata T, et al:Arthroscopy. 2013;29(3):459-70.
3) Mihata T, et al:Am J Sports Med. 2018;46(5): 1077-83.
4) Mihata T, et al:Am J Sports Med. 2018;46(11): 2707-16.
【解説】
長谷川彰彦,三幡輝久* 大阪医科大学整形外科 *准教授