下肢骨折は,適切な治療が行われないと関節に負荷がかかり,再生不可能な軟骨損傷を生じるだけでなく,高齢者であれば治療のタイミングが命につながることもある。
診断のポイントは,詳細な問診,正確な診察,正確な画像診断,の3つである。
受傷メカニズムから骨折形態を把握できることが多くあるので,どのように足をついたのか,どの方向に捻ったかなど詳細に受傷時の状況を確認する。本人の記憶があいまいな場合には,周囲目撃者から情報を集める。高齢者の場合には,複数回の転倒により外傷が生じることもあるので,過去の転倒歴についても十分聴取する。
診察は,よく患者を触り,圧痛点を明確にすることがポイントである。特に小児の場合には,より詳細な診察が必要である。骨折を探すことに気をとられると,神経血管損傷を見逃すことがあるので,足背動脈,後脛骨動脈の触知,しびれの有無,足趾の運動の評価を必ず行う。
画像診断は,圧痛部位から撮像する部位を決定する。疼痛のある骨を3等分し,真ん中1/3に圧痛点があるのであれば骨の名前(大腿骨,脛骨)でオーダーを行い,近位1/3,遠位1/3であれば骨に近い関節の名前(股関節,膝関節,足関節)でオーダーをすると間違いが少ない。X線は原則,正面,側面の2方向撮像をするが,股関節X線は,両股関節正面,疼痛部位の軸位,膝関節は,軸位を加えた3方向で撮像する。足関節X線は,明らかな変形があれば2方向で十分であるが,両斜位を加えた4方向撮像をすると,小さい骨折でも診断が可能となる。
骨折部の転位および不安定性がなければギプスシーネ固定,もしくはギプス固定による保存的加療が可能となる。転位がある,もしくは不安定性を有する骨折は,手術加療が必要になる。ただ,高齢者の大腿骨近位部骨折については,24~48時間の早期手術が,死亡率,合併症を減少させることが知られているため,全例可能な限り早期に手術をする必要がある。
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