従来,乳幼児期の股関節脱臼は先天性股関節脱臼と呼ばれてきた。しかし,出生前に既に脱臼しているものと出生後に脱臼するものがあり,先天性という用語が必ずしも適切ではないという考えから,最近は臼蓋形成不全,亜脱臼,脱臼のすべての病態を含めて発育性股関節形成不全(developmental dysplasia of the hip:DDH)と称されるようになった。亜脱臼と脱臼の発生頻度は約0.3%で,男女比は1:5~9とされている。
近年,診断が遅延して歩行開始後に脱臼と診断される例がみられる1)。そのため,日本小児整形外科学会では「乳児股関節健診推奨項目と二次検診への紹介」を作成した(日本小児整形外科学会ウェブサイトからダウンロード可能)。これは,①股関節開排制限(開排角度),②大腿皮膚溝または鼠径皮膚溝の非対称,③家族歴:血縁者の股関節疾患,④女児,⑤骨盤位分娩(帝王切開時の肢位を含む)のうち①が陽性の場合と②〜⑤のうち2つ以上あれば整形外科に紹介する,というものである。しかし,理学所見のまったくない脱臼も存在するので,乳児期には超音波検査が必須である。また,歩行開始後に保護者が歩容異常を訴える場合には,たとえ走れていても念のため股関節のX線を撮るべきである。
新生児期は,コアラだっこで股関節を開排位に保つようにする。生後2~3カ月頃より,高位脱臼を除いてはリーメンビューゲル装具により治療を行う。リーメンビューゲル装具による整復率は70~80%である。整復不能または再度脱臼した場合には,生後7~8カ月で入院し,持続牽引を行う。
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