1934年にCodmanが,筋攣縮や肩甲上腕関節の拘縮を起こしている状態をfrozen shoulderと命名し,その日本語訳として凍結肩という用語が用いられている。凍結肩は原因不明の特発性の肩関節拘縮と定義される。引き起こす要因として糖尿病,甲状腺疾患,デュピュイトラン拘縮,喫煙の関与が指摘されている1)。発生頻度は人口の2~5%とされるが,糖尿病患者では20%ほどに発生すると言われている。その症状は,肩関節の可動域制限と疼痛で,3つの病期にわけられる。
急性期:強い疼痛のため,あらゆる方向への可動域が制限されるが,真の拘縮はないと言われている。運動時痛,夜間痛が特徴とされる。
凍結期:肩甲上腕関節に限局した他動可動域制限を生じる。疼痛は軽快傾向で,肩甲帯の動きで見かけの挙上や内外旋運動を行う。このため,肩関節の挙上時にいかり肩になる。疼痛が軽減したために,患者はよくなったと思っている場合がある。
寛解期:可動域,疼痛の改善が生じてくる時期。
肩関節に限局した疼痛(運動時痛,安静時痛,夜間痛)と可動域制限。肩関節が動かせる範囲内での,肩の筋力は保たれている。
単純X線検査:正常もしくは時に骨萎縮を認める。腱板断裂に伴って認められる関節症性変化はほとんどみられない。
MRI検査:腱板の連続性は保たれており,関節内,滑液包内に軽度の水腫を認めることがある。
①石灰性腱炎(単純X線検査で診断),②腱板断裂(MRI検査で診断),③頸椎症(腱反射,知覚障害などの神経学的所見による)。
保存療法が主体となる。
三角巾による患肢の安静,消炎鎮痛薬や睡眠導入薬の内服,関節内への注射療法などによって急性期の運動時痛,安静時痛を軽快させる。就寝時には肘の下に枕を挿入すると疼痛が軽減できる。これらの治療により,通常1~2カ月で症状は軽快していく。
急性期の疼痛が軽減してくれば患肢の振り子運動,理学療法士による徒手矯正,腱板強化訓練を開始する。ホームワークとして,両手の手指を組み,仰臥位をとり健側上肢で患側上肢を挙上させる。
2~3カ月に及び上記の保存療法を施行しても安静時痛,夜間痛,睡眠障害,日常生活動作の障害が改善しない重症例に対して,全身麻酔と持続斜角筋ブロックを併用した関節鏡視下全周性関節包解離術を検討する。
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