肺炎を発症した重症の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者を対象に「フサン」(一般名:ナファモスタットメシル酸塩)と「アビガン」(一般名:ファビピラビル)の併用療法の観察研究を行っている東大病院のグループは7月6日、患者11例中10例で臨床症状の軽快が見られたとする研究成果を発表した。研究成果は7月3日、「Critical Care」オンライン版に掲載された(筆頭著者は土井研人救命救急センター・ER准教授)。
抗ウイルス薬アビガンは、RNAポリメラーゼを抑制することで新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の細胞内での増殖を抑制、抗凝固薬フサンは、SARS-CoV-2が細胞へ侵入する過程を阻止する可能性があるとされており、いずれもCOVID-19治療薬候補として注目されている。フサンとアビガンは、ウイルスの増殖過程における作用部位が異なることから、併用による相加的な効果が期待されている。
東大病院の観察研究では、肺炎を発症し集中治療室(ICU)での治療を必要とした重症のCOVID-19患者11例(4月6~21日に入院、男性10例・女性1例、中央値68歳)を対象に、フサンとアビガンの併用療法を実施。臨床症状の軽快が見られた10例は、人工呼吸器使用が7例、うち3例はECMOを必要としていたが、平均16日で人工呼吸器が不要になったという。
東大病院のグループは、海外の治療成績と比較して良好な経過をたどっていることから、フサンとアビガン併用の有効性を示唆するものと評価。フサンとアビガンの併用効果だけでなく、フサン単独の効果も考えられるとし、「今後の臨床研究の必要性を示唆する結果となった」とコメントしている。