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糖尿病の認知症リスクとその予知マーカーについて

No.5022 (2020年07月25日発行) P.48

的場ゆか (国立病院機構小倉医療センター糖尿病・ 内分泌代謝内科医長/糖尿病センター)

浅原哲子  (京都医療センター臨床研究センター 内分泌代謝高血圧研究部部長)

登録日: 2020-07-22

最終更新日: 2020-07-17

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  • 糖尿病は認知機能低下のリスク因子であると言われていますが,認知症を発症すると糖尿病診療の継続にも支障が出ることが懸念されます。認知症発症の予知マーカーやその臨床応用の可能性について教えて下さい。
    京都医療センター臨床研究センター・浅原哲子先生にご回答をお願いします。

    【質問者】

    的場ゆか 国立病院機構小倉医療センター糖尿病・ 内分泌代謝内科医長/糖尿病センター


    【回答】

    【認知症のハイリスク群であるが,至適バイオマーカーや治療法は未確立】

    超高齢社会のわが国では,高齢者糖尿病の増加とともに認知症患者は増加しており,2025年には軽度認知障害(mild cognitive impairment:MCI)を含め約1300万人に達すると試算されています1)。近年,久山町研究等の疫学研究より,糖尿病患者においては脳血管性認知症(vascular dementia:VaD)およびアルツハイマー病(Alzheimer’s disease:AD)のいずれの発症リスクも約2〜3倍,有意に上昇すると報告され,認知症の原因として糖尿病が注目されています2)。糖尿病に伴う認知機能低下は,糖尿病治療の遵守不足や要介護に繋がり,認知症対策は喫緊の課題と言えます。

    認知症の要因として,低血糖,高血糖,高インスリン,炎症や動脈硬化等が想定されますが,筆者らの日本医療研究開発機構(Japan Agency for Medical Research and Development:AMED)研究「認知症進行の抑制を目的とした糖尿病管理の指針等の開発に関する研究─系統的レビューに基づく提言」(2017年度)では,糖尿病患者における認知症予防のための効果的な治療法やバイオマーカーは確立されていないことが判明しました3)。また,肥満は認知症リスクを低下させるとの報告もありますが4),肥満と認知症との関連性についても十分な結論が得られていません。

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