編著: | 小川 渉(神戸大学大学院医学研究科糖尿病・内分泌内科学部門教授) |
---|---|
編著: | 廣田勇士(神戸大学大学院医学研究科糖尿病・内分泌内科学部門准教授) |
判型: | B5判 |
頁数: | 216頁 |
装丁: | カラー |
発行日: | 2024年08月20日 |
ISBN: | 978-4-7849-2497-4 |
版数: | 第1版 |
付録: | 無料の電子版が付属(巻末のシリアルコードを登録すると、本書の全ページを閲覧できます) |
◆糖尿病患者さんの血糖管理のために必要な「血糖自己測定」。それをより簡便に、精度を高くできるように開発されたのが持続血糖測定器(CGM)です。保険適用の範囲が広がったこともあり、糖尿病患者さんへのCGM利用を考えている先生も多いのではないでしょうか?また、CGMを使ってはいるが、ただ漫然と数値を見ているだけになっていないでしょうか?
◆本書では機器の説明だけではなく、それを使うことでの「血糖値管理」「患者への指導方法」まで含め、実症例を交えて解説。一歩進んだ糖尿病治療をするための書籍です。
第1章 CGM総論
1 CGMの臨床的意義
2 プロフェッショナルCGMとは
3 間歇スキャン式CGM(isCGM)とは
4 リアルタイムCGM(rtCGM)とは
5 CGMの保険適用
第2章 CGMを用いる際に知っておくべき基本的事項
1 CGMのデータマネジメントツール
2 AGPとは
3 CGM指標とは
4 CGMの干渉物質,皮膚トラブルとその対応
第3章 CGMの活用:どんな人に使用するのが良いのか
1 プロフェッショナルCGM(検査)
2 BOTにおけるCGM(治療)
3 2型糖尿病のMDIにおけるCGM(治療)
4 1型糖尿病におけるCGM(治療)
5 インスリンポンプにおけるCGM(isCGM,rtCGM,SAP)活用
6 妊娠中(妊娠糖尿病,2型糖尿病合併妊娠)のCGM活用
7 妊娠中(1型糖尿病合併妊娠)のCGM活用─SAPからAIDシステムへ
8 小児におけるCGMの運用
9 透析患者におけるCGM活用─isCGM,rtCGM
10 高齢者におけるCGM活用(家族サポートも含め)
11 低血糖時のCGM活用(低血糖予防)
12 高血糖時のCGM活用
13 運動時のCGM活用
14 シックデイ時のCGM活用
15 ステロイド使用中におけるCGM活用
16 COVID-19入院中のCGM活用
17 カーボカウント支援におけるCGM活用
18 CGMを活かすチーム医療
本書の刊行にあたって
持続血糖測定器(continuous glucose monitoring:CGM)がわが国で保険適応となってから15年が経過しました。その間,CGM機器の進歩は目覚ましく,数年ごとに新しい機能を備えた製品が登場し続けています。また,保険適用範囲もしだいに拡大し,今では多くの人の糖尿病ケアに活用されるようになってきました。
過去半世紀の糖尿病診療における最大のイノベーションはHbA1cの導入です。1970年代に保険適用となったHbA1cが糖尿病診療の主要な目標を急性合併症の予防から慢性合併症の予防に変えたといっても過言ではありません。現在使用されている多種多様な糖尿病治療薬もHbA1cという優れたバイオマーカーがあってこそ開発できたと言えます。
とはいえ,HbA1cにも欠点や限界はあり,CGMの登場は今までHbA1cでは見えなかったものを見せてくれるようになりました。24時間を通してグルコース値の推移をモニターすることで,来院時の検査や自己血糖測定だけではわからなかった高血糖や低血糖が把握できます。血糖推移の把握は薬剤の用法・用量の最適化に役立つだけでなく,日々の生活と血糖の関係についての理解を深め,ケアを受ける人自身がより良い行動をとることにもつながります。
CGMから得られる様々な指標も日々のケアに用いられています。推定HbA1cやGMI(glucose monitoring indicator),平均グルコース値などは,赤血赤の寿命変化などにより血糖とHbA1cの関係性が変化した場合の血糖マネジメントに役立ちます。「血糖の変動の大きさ」は「血糖の高さ・低さ」から独立して糖尿病合併症の進展要因であることがわかってきましたが,最近広く用いられるCGM指標であるTIR(time in range)は 血糖の高さ・低さと変動の大きさの両者に影響されることは重要です。また,リアルタイムCGMとの連動により,インスリンポンプ療法は人工臓器と呼んでよいレベルに達しています。
本書は,糖尿病のケアにCGMを役立てて頂くことをめざし,わが国で最もCGMに造詣の深い先生方に執筆を依頼しました。CGMについての包括的な知識について記すだけでなく,様々な診療場面での実際の活用法についてもページを割いて頂きました。初めてCGMを用いる医師,医療スタッフの方々にも役立つよう,内容の分かりやすさには特に気を配り,実際の使用例も多く紹介しています。執筆者の皆様の工夫と努力により,類書に例を見ない実践的なCGM診療の教科書になったと思います。また,出版社のご尽力によって美しく読みやすい本に仕上がりました。本書がCGMを用いたより良い糖尿病ケアの実践を目指される多くの医療者のお役に立つことを祈念しています。
2024年7月
編者を代表して 小川 渉