骨形成不全症(osteogenesis imperfecta:OI)は,主としてⅠ型コラーゲンの異常による脆弱性骨折を特徴とする。臨床像・単純X線像に基づくSillence分類が用いられ,主に4型に分類される。軽症から周産期致死性の重症(Ⅱ型)に至るまで重症度の幅が大きく,一般に重症度はⅡ>Ⅲ>Ⅳ>Ⅰ型となる。遺伝形式は常染色体優性遺伝が90%を占める。代表的な責任遺伝子はCOL1A1とCOL1A2である。
易骨折性,歯牙形成不全,難聴,青色強膜が特徴である。小児期に易骨折性を認める場合には,本疾患を常に念頭に置く必要がある。
診断基準は症状(A),検査所見(B),鑑別疾患(C)から成り,下記A 3項目以上かつB 3項目以上で,Cに該当しない場合,OIと診断する(definite OI)1)。
A(症状):①骨脆弱性;易骨折性(2回以上),進行性骨変形,②成長障害;-2SD以下の低身長,③青色強膜,④歯牙形成不全;色調異常,象牙質損傷,⑤難聴;30db以上の低下,⑥家族性,⑦小児期の骨折歴
B(検査所見):①長管骨の変形・骨折,②変形を伴う細い長管骨,③頭蓋骨Worm骨,④椎体圧迫骨折,⑤骨密度低下;同年齢基準値の80%未満
C(鑑別疾患):被虐待児症候群,原発性若年性骨粗鬆症,低ホスファターゼ症,線維性骨異形成症,Ehlers-Danlos症候群などが対象である。乳幼児期の被虐待児症候群では骨傷が骨幹端部に多く(corner fracture),OIにみられる頭部単純X線側面像でのWorm骨を認めない。火傷などの皮膚病変や痕跡があれば,虐待の可能性が高い。原発性若年性骨粗鬆症では,頸椎圧迫骨折と長管骨骨幹端部骨折を特徴とし,一般に年齢とともに骨塩定量の測定値が改善する。周産期の良性型低ホスファターゼ症においては,血清アルカリホスファターゼが400U/L以下を示す。
生下時,生直後より長管骨の変形・骨折がみられる重症型のⅢ型については,早期に小児科医と連携してビスホスホネート製剤であるパミドロネートの投与を開始し,易骨折性と骨密度の改善を目指す。Ⅰ,Ⅳ型も易骨折性が顕著であれば同様に投与の適応とする。内科的治療に抗して頻回の骨折と長管骨の変形を生じる場合には,補装具による保存療法や髄内釘の挿入などの手術療法を行う。
重度の骨形成不全症においては,骨折,変形,筋力低下の3つが相互に関連して立位や移動能力を障害する。骨折を繰り返すと変形を生じ,外固定により骨萎縮と筋力低下が起こる。変形により骨折しやすくなり,筋力低下により筋性防御が働かないと骨折しやすい。これら3つの症状は,相互に影響して悪循環を形成する。このスパイラルを絶たないと機能障害が定着する。したがって,①早期に内科的治療を開始して骨折の予防と骨質の改善を行う。②変形・弯曲が20~30°以上あれば,早めの変形矯正と髄内釘固定により骨折の予防を図る。目安として3歳以上を手術対象としている。
一方,骨折回数が少ない軽症例では,生活指導や運動制限によりコントロールする。
学童期,思春期より側弯・後弯などの脊柱変形をきたすことがあるが,体幹装具(コルセット)は脆弱な肋骨への圧迫による変形をまねき,結果的に胸郭を潰し,呼吸機能を損ねるリスクがある。特に幼児期・学童期における使用は慎重でなければならない。
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