硬膜穿刺後頭痛(腰椎穿刺後頭痛)は腰椎穿刺の5日以内に発症し,坐位・立位をとると15分以内に増悪し,臥位になると15分以内に改善する頭痛である。非拍動性の鈍痛で,両側性に後頭部や前頭部に起こる。項部硬直,耳鳴,聴力低下,光過敏,悪心などを伴うこともある。腰椎穿刺後の1~40%に合併し,リスク因子は女性,妊娠,若年,やせ型,太い穿刺針である。
発症を完全に予防することは不可能であるが,腰椎穿刺時には細い針(21~23G)で,なるべく少ない施行回数で行い,針を引き抜く際に外筒に内筒を入れてから引き抜くことでリスクを低減できる。髄液採取量,腰椎穿刺後の安静の有無は発症リスクとは関連しない。
腰椎穿刺によって硬膜に小孔が生じると,孔から髄液がくも膜下腔へ漏出し髄腔内の髄液量が減少する。脳は頭蓋内では髄液中に浮かんでいる状態にあるため,腰椎穿刺で脳重量を支えている髄液が減少すると,立位では髄膜や脳神経が尾側に牽引される。さらに脳血管の外圧が低下し,脳静脈の拡張が起こる。これらが硬膜穿刺後頭痛の病態と考えられている。
診断は経過,症状から容易であることが多い。補助的に画像診断を考慮することもある。頭部MRIでは小脳扁桃の下垂,下垂体の腫大,硬膜のびまん性造影増強効果を認める。脳槽シンチグラフィーやCTミエログラフィー,脊髄MRI,MRミエログラフィーで髄液漏出部が確認できることもあるが,すべての症例に画像検査を行う必要はない。
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