起立性調節障害(orthostatic dysregulation:OD)は,思春期に起こりやすい自律神経機能不全であり,起立に伴う循環動態の変化に対する生体の調節機構が破綻することによって生じる,めまい,立ちくらみ,動悸,腹痛,頭痛などを症状とする疾患である。睡眠リズムや体温調節の異常を伴うことも多く,心理社会的ストレスによって影響を受けることから,心身医学的なアプローチも必要となる。
立ちくらみ,入浴時の気分不快,朝起きられず午前中の調子が悪い,といった症状から診断する。類似の症状を呈する疾患を除外するとともに,起立試験,head-up tilt試験などを行い診断するが,詳細はガイドライン1)を参照されたい。
重症度と心理社会的関与の有無から,治療的対応の組み合わせを決定する1)。非薬物療法がきわめて重要であり,薬物療法に優先して行う。治療開始後は,1~2週間ごとに通院とする。薬物療法の効果判定は2週間をめどに行い,無効の場合には変更する。
「朝起きられなくて,午後になると元気なのに,学校に行けない」「学校に行こうとすると腹痛や下痢を起こして行けない」「学校に行くことができても,保健室で寝ている」など,一見「怠け者」と誤解され,本人がつらい思いをしていることが多い。「これは,自律神経の調節がうまくいかない病気である」ことを,本人と保護者に説明する。「ちょっと長くなるけど,必ず治るから」とサポートしていくことが重要である。
早寝・早起きを心がけるが,無理強いはしない。朝になったら太陽の光を浴びるように指導する。起床・起立は30秒以上かけてゆっくり行う。暑い場所は末梢血管が広がるため,症状が悪化する可能性があり,入浴はその典型である。低血圧の傾向があるため,塩分・水分を十分にとるよう指導する。学校に行けない場合でも,可能なら午前中に散歩や軽い運動を行うように指導する。下肢からの静脈灌流を促進する目的で,弾性ストッキングを着用してもよい。
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