QT延長症候群(long QT syndrome:LQTS)は,心電図におけるQT延長とtorsade de pointes(TdP)と呼ばれる多形性心室頻拍を生じる疾患である。遺伝性LQTSと二次性LQTSに分類される。最近の研究では,二次性LQTSと診断された患者の約3割に,遺伝性LQTSにおいて報告のある遺伝子変異を認めることが明らかになった。
TdPは自然停止しやすい。TdPが起きている間は血圧が低下するため,「繰り返す失神やめまい」が主訴になることが多い。一方,TdPは心室細動に移行することがあり,心臓突然死の原因になる。
心電図におけるQT延長所見が重要である。QTc≧500 msecの例は高リスクであり,QTc≧600msecでは特にリスクが高い。遺伝性LQTSが疑われた場合,Schwartzスコアを算出する。2013年に発表されたHRS,EHRA,およびAPHRSの3学会による合同ステートメントでは,Schwartzのリスクスコア≧3.5のほかに,先天性LQTS関連遺伝子の明らかな病的変異,または繰り返し記録された12誘導心電図でQTc≧500msec,のいずれかを認める場合も先天性LQTSと診断することになった1)。日本循環器学会のガイドライン(2017年改訂版)もこれに準じている2)。先天性LQTSでは,遺伝子型によりT波形態が異なる。LQT1は幅広い(broad-based)T波,LQT2は平低ノッチ型(low amplitude,notched)T波,LQT3は長い等電位のST部分とT波のピークが後ろにある遅発性(late-appearing)T波が特徴的とされている。
遺伝子検査は2008年から保険償還されており,先天性LQTSと確定診断される患者の約75%に遺伝子変異が同定される。予後推定や治療方針の決定につながるので積極的に行うべきである。Romano-Ward症候群は常染色体優性遺伝を示し,これまでに15の原因遺伝子が同定されている(LQT1~LQT15)。LQT1,LQT2,LQT3で全体の約90%を占める。Jervell and Lange-Nielsen症候群は常染色体劣性遺伝を示し,先天性聾を伴う(JLN1,JLN2)。
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