厚生労働省は10月9日の社会保障審議会介護給付費分科会に、「平成30年度(2018年度)介護報酬改定の効果検証及び調査研究に係る調査(2020年度調査)」の結果の速報版を報告した。療養病床などから介護医療院への移行予定に関する調査では、回答した介護療養型医療施設の23.7%が、設置期限が終了する23年度末においても、引き続き介護療養型医療施設に留まる意向であることが明らかになった。速報結果は21年度介護報酬改定に関する議論の基礎資料として活用される。最終結果の報告は21年3月以降の見通し。
分科会に報告されたのは、①福祉用具貸与価格の適正化、②訪問介護における18年度改定の影響、③医療提供を目的とした介護保険施設等のサービス提供実態及び介護医療院等への移行、④認知症対応型共同生活介護等における18年度改定の影響―に関する調査研究事業の速報値。20年度にはこの他にも、科学的介護データベース「CHASE」のサービスの質確保への貢献度などを検証する調査が行われているが、同日の分科会には間に合わなかった。厚労省は10月末までには速報値の取りまとめを終えたいとしている。
このうち③は、療養病床を持つ医療機関の介護医療院への移行予定や、在宅復帰・在宅療養支援機能の強化を図るために18年度改定で報酬体系の大幅見直しが行われた介護老人保健施設の実態などを調べた。
介護医療院の開設状況をみると、開設主体では「医療法人」(構成比91.3%)が、類型では「I型介護医療院サービス費(I)」(47.0%)が最も多かった。開設前の施設は、「介護療養型医療施設(病院)(療養機能強化型A)」(33.9%)、「20対1医療療養病床」(30.4%)、「25対1医療療養病床」(15.7%)などが上位を占める。移行の規模は、「全病床」(51.3%)が、「一部の病床」(46.1%)を上回った。
介護医療院の開設を決めた理由では全体の80.0%が「自院には介護医療院にふさわしい患者が多いと考えられた」と回答。「病院からの退院先となる場合には自宅等として取り扱われることに魅力を感じた」との回答も、67.7%に及ぶ。開設にあたっての困難・課題では、「入所者や家族への説明」(46.1%)、「入所者にとっての生活の場となるような配慮」(42.6%)などを挙げる施設が多かった(いずれも複数回答)。
入所者のケアの状況をみると、日中の平均的な離床時間は「0分より多く30分未満」(17.1%)、ベッド座位時間は「3時間以上」(23.4%)がそれぞれ最多。医療処置の実施率は、「リハビリテーション」73.5%、「浣腸」30.0%、「摘便」28.3%、「喀痰吸引」27.7%などとなった。
一方、療養病床を持つ医療機関と介護療養型老人保健施設(転換型老健)に、23年度末の病床の移行予定を聞いたところ、介護療養型医療施設は「I型介護医療院」(33.1%)、医療療養病床は「医療療養病床」(90.6%)、転換型老健は「介護老人保健施設」(77.2%)との回答が最も多かった。ただ、介護療養型医療施設では、23.7%が移行せずに介護療養型医療施設に留まると答えており、今後、議論を呼ぶことになりそうだ。
老健に関しては報酬区分の推移などを調べた。それによると、17年に「在宅強化型」だった施設は18年時点で80.2%、19年時点では89.6%が「超強化型」に移行。「従来型」の施設も、18年時点で21.2%、19年時点で32.7%が「加算型」に移行するなど、上位区分へのシフトが確認された。19年の在宅復帰率は平均36.1%、退所前後訪問指導割合は平均59.9%で、いずれも上昇傾向にある。