1 レジオネラ症とは
・レジオネラ症には,軽症のポンティアック熱型と肺炎型がある。
・レジオネラ属菌に汚染された感染源からのエアロゾルなどの吸入により,感染が成立する。
・レジオネラ属菌は,市中肺炎および院内肺炎の起炎菌としても重要である。
・わが国でのレジオネラ症は,特に入浴施設における大規模な集団発生が社会問題となり,その対策がなされてきた。
2 わが国におけるレジオネラ症の現状
・わが国におけるレジオネラ症の報告は,著しい増加傾向にある。
・増加傾向の要因のひとつは,尿中抗原検査を中心とした診断法の進歩である。国内外の感染源対策は十分ではなく,国内旅行や海外旅行の増加が影響している可能性もある。
3 臨床症状
・レジオネラ症の宿主側の危険因子は,男性,喫煙者,慢性疾患,免疫抑制状態,担がん患者,50歳以上,などである。
・レジオネラ曝露の危険因子として,最近の1泊以上の旅行,温泉,公衆浴場の利用,給水・給湯系の管理不十分,冷却塔の管理不十分,などが挙げられる。
・潜伏期間は2〜10日間。レジオネラ肺炎では,男性に多く,呼吸困難,精神神経症状,LDH高値,CRP高値,低ナトリウム血症の所見が比較的多く認められるが,症状のみによる鑑別は困難である。
4 画像所見
・胸部X線像では大葉性肺炎像や多発性病変を呈することが多く,時に胸水の合併が認められる。
・胸部CTでは非区域性に進展するconsolidationとその周囲のすりガラス陰影(GGO)が特徴的である。
5 診断法
・確定診断のgold standardは臨床検体からのレジオネラの分離培養であり,専用の培地(B-CYEαなど)を用いる必要がある。
・尿中抗原検査が広く用いられているが,既存のキットではLegionella pneumophila血清群1以外のレジオネラ属菌を検出できないことが欠点であった。この欠点を補うものとして,レジオネラ特異的核酸を検出するLAMP法や新規に開発された尿中抗原検査キットが有用である。
6 治療
・キノロン系薬あるいはマクロライド系薬を用いる。
7 予防・環境対策
・レジオネラ症を診断した医師は,直ちに保健所に届け出る必要がある。
・感染源調査と環境整備が,感染拡大を防止するために重要である。