2021年度介護報酬改定に向けた検討で、厚生労働省は10月22日の社会保障審議会介護給付費分科会に、訪問系サービスの論点を示した。医師などによる居宅療養管理指導では、利用者の居住場所に応じたよりきめ細かな評価に見直すことを提案。訪問看護では、在宅での療養環境を早期に整える観点から、一定の条件を満たせば退院当日の算定を認める案を示した。
居宅療養管理指導の報酬は単一建物の居住者の人数に応じて、1人、2〜9人、10人以上の3段階に設定されている。論点では複数の利用者にサービスを提供する際、同一建物にいる場合とそうでない場合とでは、利用者1人当たりの滞在時間や移動時間が異なることから、居住場所に応じたよりきめ細かな評価にすることを検討課題に位置付けた。
医師による居宅療養管理指導では、算定要件であるケアマネジャーへの情報提供について、診療報酬の診療情報提供料の様式を活用する現在の取り扱いを改め、主治医意見書の様式を反映させた新たな様式とすることを提言した。要介護認定の有効期間が従前よりも長くなり、主治医意見書の内容をケアプラン策定に活かす機会が減っていることを考慮した。
訪問看護では、「特別管理加算」の対象に該当する者のみとされている退院当日の訪問看護の算定対象を拡大。一定の条件を定めた上で、退院当日の算定を広く可能にする考えを打ち出した。算定率が一桁台に止まっている「看護体制強化加算」は、「算定月の前6カ月間の利用者総数のうち『特別管理加算』を算定した割合が30%以上」とする要件の見直しを促した。18年度改定の検証調査によると、「看護体制強化加算」を算定できない理由では、「特別管理加算の対象となる利用者が少ない」が55.0%で最多。また、19年3月時点で、「特別管理加算」の前6カ月の算定率30%以上の要件を満たせていた事業所が、19年9月時点でも継続して満たせていた割合は80.6%となるなど、要件充足の継続の難しさも明らかになっている。
このほか、▶訪問介護の「特定事業所加算」を区分支給限度基準額の対象外とする、▶訪問介護における看取り期の対応に関する評価、▶訪問リハビリテーションの上限(週6回まで)を、退院・退所直後に関しては診療報酬(退院日から3カ月以内は週12単位まで可)を参考に見直す、▶訪問リハビリテーションで、事業所医師以外の医師が診療した場合に20単位を減算する「診療未実施減算」について、診療を行う医師に求められる「適切な研修の修了等」の適用猶予期間(現在は21年3月末)を延長した上で、研修や評価のあり方を見直す―などが検討課題に挙がっている。