脳梗塞の病型は,①ラクナ梗塞,②アテローム血栓性脳梗塞,③心原性脳塞栓症,④その他の脳梗塞,に大別され,それぞれが1/4ずつを占める。超急性期には,発症4.5時間以内のすべての病型の脳梗塞に対するrt-PA(アルテプラーゼ)静注療法,発症6時間以内(画像条件によっては発症16ないし24時間まで)の内頸動脈・中大脳動脈M1部閉塞に対する経皮経管的脳血栓回収療法が強く推奨されている1)。
以下の症状を1つでも認める場合は,rt-PA静注療法や血栓回収療法,緊急開頭手術を実施可能な専門施設へ,一刻も早く,家族の到着を待たずに緊急搬送する。脳主幹動脈閉塞や脳出血の可能性が高く,脳主幹動脈閉塞の場合は,経皮経管的脳血栓回収療法により半数以上が日常生活復帰をめざせる。しかし,血栓回収療法を行わなければ,日常生活復帰は2割程度でしかない。
片麻痺:両上肢を同時に挙上すると,麻痺側は回内・手指屈曲を伴って下垂する。両下肢を同時に挙上すると,麻痺側は下垂する。
失語:物品呼称(時計・眼鏡・ボールペン),口頭指示「右手で左耳をさわってください」,文の復唱「みんなで力を合わせて綱を引きます」を試みる。
半側無視,同名半盲,共同偏視:患者の前50cm程度の位置で,検者の両手を50cm程度離して同時および一方ずつ回旋させ,患者が両方を認識して視線を向けるか確認する。症状が強ければ,左右いずれかへの共同偏視を認め,片方ばかりを見る。
意識障害:いわゆるAIUEOTIPSに従って低血糖などの緊急疾患を鑑別し,同時に脳血管障害に特徴的な以下の所見を診察する。左右の眼位のずれ(斜偏倚),瞳孔の左右差,両上下肢落下速度の左右差,バビンスキー反射などがみられる場合,脳血管障害の可能性が高い。
上記の症状が明らかでない場合も,半側の感覚障害・感覚異常,歩行時の左右いずれかへの傾き,構音障害や左右いずれかの口角下垂は,脳血管障害を示唆する症状である。
単純CTでは脳梗塞の診断は困難であるが,広範な早期虚血所見(大脳皮質,大脳基底核の不明瞭化)があればrt-PA静注療法は禁忌である。同時にCTアンギオグラフィ(CTA)で閉塞血管を同定する。MRIへのアクセスが良好な施設では,拡散強調画像(diffusion weighted imaging:DWI)で虚血病巣の有無・部位,大きさ,病巣数などを評価し,MRアンギオグラフィ(MRA)で閉塞血管を同定する。
脳梗塞の病態解明のため,頸部血管エコー,経頭蓋ドプラ,心電図(12誘導,ホルター),心エコー図(経胸壁,経食道),下肢静脈エコー,下肢血管エコー,血液検査を実施する。これらの検査でも塞栓源が不明の場合は,植込み型心電計を留置して心房細動検出を試みる。
超急性期には,適応例にはrt-PA静注療法,血栓回収療法を行う。進行・再発予防のため抗血栓療法を行い,脳保護療法や抗浮腫療法を併用し,感染症・心不全・深部静脈血栓症などの合併症の予防・治療,経口摂取不能例では経管栄養療法を行う。早期にリハビリテーションを開始し,回復期に移行する。
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