生下時に前足部内転,後足部内反,足全体の尖足を呈する。発生頻度は約1000人に1人で,男子は女子の2~3倍である。片側例と両側例はほぼ同数で,左右も同数である。親,兄,姉が先天性内反足の場合には,発生頻度は10~20倍になると言われているが,遺伝子は同定されていない。特発性と症候性に分類される。症候性は多発性関節拘縮症1),筋緊張性ジストロフィー症,二分脊椎などに伴うもので,より重症である。
親族に手足の変形があるかを問診する。また,先天性股関節脱臼との合併例もみられるので,その家族歴や骨盤位分娩かどうかも確認する。視診だけではなく実際に足を触って,外反矯正や背屈してみることが重要である。重症例では,外反矯正や背屈しようとしても20°以上変形が残存する。軽症例では,中間位まで矯正できる場合もある。一般病院でX線検査をする必要はない。専門病院に受診した際に,足部のストレスX線撮影を行う。足部X線像は,軽度外転位で正面像と,最大背屈位および最大底屈位の側面像を撮影する。正面像で距骨と踵骨の重なりが強く,最大背屈位側面像では脛距角105°以上,脛踵角70°以上となっている。
徒手矯正操作にて尖足がなく,前足部の内転のみがみられる場合は内転足である。子宮内での肢位によることが原因で自然に治る場合も多いが,歩行開始後も内転変形が残存することもあるので,念のため専門医に診てもらったほうがよい。
先天性内反足は,20年くらい前までは距骨下全周解離術という手術が主流であったが,硬い足になってしまうという反省から,15年ほど前から広範な軟部組織解離術を行わないPonseti法が,全世界でgold standardとなった。Ponseti法は,尖足のままギプスによる凹足矯正を行い,尖足はアキレス腱の皮下切腱により対処する。その後に足部を70°外旋位に保つ足部外転装具を,歩行開始までは23時間,歩行開始後は夜間のみ4歳まで使用するという治療体系である。日本でもPonseti法が主流となり,先天性内反足の治療成績は著明に改善した。しかし,装具の装着をいやがる患児も多く,装具を装着しないと治療成績は不良である。また,重症例では,装具を装着していても変形遺残や再発が問題となる。欧米では,手術をしても硬い足になってしまうので,多少の変形遺残は許容していると思われる。
当科では,歩行開始後に後足部内反により足背や外側で接地してしまう症例には,距骨下関節を解離しない後内側解離術を行っている2)。
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