社会保障審議会介護給付費分科会は11月5日、2021年度介護報酬改定に向け、地域包括ケアシステムや自立支援・重度化防止の推進について意見交換した。この中で厚生労働省は、「ADL維持等加算」の対象サービスの拡大や、CHASE(高齢者の状態・ケア内容のデータベース)へのデータ提出と活用を新たに評価することなどを提案した。
「ADL維持等加算」は利用者の状態の維持・改善に着目したアウトカム評価として、2018年度の介護報酬改定時に導入。自立支援・重度化防止につながる機能訓練などに取り組み、ADLの維持・改善につながった利用者が多い通所介護事業所(地域密着型通所介護含む)を評価する報酬となっている。
ただ、算定要件が複雑であることなどから取得が進まず、20年4月時点の取得率は2.38%にとどまる。ADLの維持・改善効果が出やすい利用者を選別するクリームスキミングを懸念する声も強く、厚労省のデータによると、初月のBarthel Index(BI)の値が低い利用者ほど、6カ月目のBI値は高く、逆に初月の値が高いほど6カ月目の値は初月よりも低くなる傾向があることが明らかになっている。
こうした実態を踏まえて厚労省は、▶通所介護事業所と同様に、ADL維持などを目的とした取り組みを行うサービスにも算定対象を拡大する、▶クリームスキミングを防止する観点も含め、評価開始時点のADLを考慮できる仕組みや、算定要件の簡略化を検討する―などについて議論を促した。
また、加算取得を目指してBI値を報告している事業所の約9割が、ADL利得上位85%の利用者のADL維持・改善を求める要件を満たしていることから、より効果的な自立支援の取り組みを行なっている事業所を高く評価することについても検討を求めた。
一方、CHASEについては、先行するVISIT(通所・訪問リハビリテーション情報のデータベース)を参考に、データ提出とそのフィードバックを受けることによってPDCAサイクルを回し、介護の質の向上につなげていく仕組みの構築を提案した。現在、通所・訪問リハビリテーションの「リハビリテーションマネジメント加算」では、VISITにデータを提出しフィードバックを受けた場合の評価区分が設定されている。
具体的な制度設計では、CHASEの収集項目に関連した既存の加算(個別機能訓練加算、口腔衛生管理加算、栄養マネジメント加算)における計画書の作成や、それに基づくケアの実施などの上乗せの取り組みとして、CHASEへのデータ提出などを評価することを提案。事業所単位の評価(要件を満たす事業所の全利用者で算定)とし、対象サービスは施設サービスと通所サービスを中心に検討する考えを示した。21年度からのVISIT・CHASEの一体的運用を見据えて、VISITについても対象サービスの拡大を検討することや、両者を統一した名称とすることなども提案した。
このほか、▶「認知症専門ケア加算」の対象を訪問系サービスに拡大する、▶行動・心理症状(BPSD)への対応力向上を図るため、BPSD対応に関する各事業所の取り組み状況を利用者が情報公開システム上で確認できる仕組みを検討する、▶看取り、ターミナルケアに関する加算要件や基本報酬において、「人生の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドライン」等の内容に沿った取り組みを行うことを明示する―などが検討課題に挙がっている。