薬疹の中でも,重篤な全身症状を伴い,時に致死的である重症薬疹にはStevens-Johnson症候群(SJS),中毒性表皮壊死症(toxic epidermal necrolysis:TEN),薬剤性過敏症症候群(drug-induced hypersensitivity syndrome:DIHS)がある。これらの疾患をみた場合は,被疑薬を可能な限り中止・変更し,速やかに皮膚科専門医に紹介する必要がある。
全身の皮膚に短期間で紅斑が拡大し,発熱や全身倦怠感などの全身症状を伴う。SJS/TENでは水疱,びらん,粘膜疹を認めるが,わが国では水疱,びらんなどの表皮剝離が体表面積の10%未満のものをSJS,10%以上のものをTENと定義している。一方,DIHSでは全身の紅斑に加え表在リンパ節腫脹や末梢血・肝機能異常を認める。顔面の浮腫と口囲の丘疹や鱗屑を認めるのが特徴である。診断にあたってはSJS/TEN,DIHSともに診断基準を参照する。
薬歴から被疑薬を推測し,早急に中止または他剤へ変更する。通常は薬剤開始後2週間程度で発症することが多いが,DIHSでは2~6週間後と比較的遅く発症するため,注意を要する。病型により比較的発症頻度が高い薬剤があり,薬剤同定の参考になる(表)。いずれの病型も全身管理のため,入院治療を原則とする。
SJS/TENでは,高用量のステロイド内服を行い,拡大が続く場合はステロイドパルス療法を行う。効果が不十分であればγグロブリン大量静注(IVIg)療法や血漿交換療法を考慮する。水疱,びらん面からの細菌感染により敗血症をきたすことがあり,熱傷に準じた処置を要する。
眼病変の後遺症として視力障害や失明をきたすことがあるため,早期の眼科受診を必要とする。
DIHSは全身の紅斑に加え,高熱,表在リンパ節腫脹,末梢血異常や肝機能障害を伴う。経過中ヒトヘルペスウイルス6(HHV-6)やサイトメガロウイルス(CMV)など,ウイルスの再活性化がみられるのが特徴的であり,薬剤中止後も症状が遷延する。治療としては,軽症であればvery strongクラスのステロイド外用のみで経過をみることも可能である。中等症以上では中等量~高用量のステロイド内服を行うが,経過中に複数回皮疹や肝機能障害が再燃・遷延することがあるため,減量には慎重を要する。
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