【頻度は低いが発症すると怖いICIs関連重症筋無力症】
免疫チェックポイント阻害薬(ICIs)は2014年に登場した新たながん治療薬である。ICIsには抗PD-1抗体,抗PD-L1抗体,抗CTLA-4抗体の3系統があり,詳しい作用機序は不明だが,腫瘍側またはT細胞側の免疫調節機構に働き,抗腫瘍効果が得られるとされる。一方,副作用に様々な免疫関連有害事象が起こることが知られており,神経障害には重症筋無力症(MG),ミオパチー,多発神経根神経障害などがある。
このうちICIs関連MGは急速に重症化する例があり,注意が必要である。多くが投与開始から2サイクル目までと早期に発症し,ステロイドパルス,免疫グロブリン大量静注療法(IVIg),血漿交換などの免疫治療に反応が悪く,クリーゼになる割合も通常より多い1)2)。ほとんどの症例で抗AChR抗体が陽性となるほか,高クレアチンキナーゼ(CK)血症を伴うことが多く,何らかのミオパチーまたは心筋炎を伴い,MGの症状を修飾している可能性がある。また,電気生理学的異常はみられない例が多い。そして,問題となるのがクリーゼとなった際の呼吸補助療法である。ICIsが投与されるのは通常治療で効果不十分であった場合である。自験例では非侵襲的陽圧換気法(NIPPV)で対応できたが2),そのような担がん患者への人工呼吸器装着は慎重に考慮する必要がある。疑わしい症状がみられた場合は速やかに対応できるよう,各科の連携が求められる。
【文献】
1) Suzuki S, et al:Neurology. 2017;89(11):1127-34.
2) 此枝史恵, 他:臨神経. 2017;57(7):373-7.
【解説】
此枝史恵 さいたま市立病院脳神経内科医長/ 帝京大学脳神経内科
園生雅弘 帝京大学脳神経内科主任教授