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急増する高齢者の救急搬送を減らすには?(岩瀬 哲 埼玉医科大学病院救急科・緩和医療科教授)【この人に聞きたい】

No.5043 (2020年12月19日発行) P.6

岩瀬 哲 (埼玉医科大学病院救急科・緩和医療科教授)

登録日: 2020-12-10

最終更新日: 2020-12-10

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救急科と緩和医療科を融合して、ADL低下時に高齢者を
地域包括ケアにつなげるシステムを全国で構築し
高齢者の救急搬送の削減を目指す

いわせ さとる:1994年埼玉医科大学卒業。東大病院緩和ケア診療部副部長、東京大学医科学研究所附属病院緩和医療科講師を経て、2017年より現職。「遠隔在宅支援システムの有用性に関する研究」を進行中。医局員も募集中。

全国の救急出動件数は年々増加し、2019年は約664万件で過去最高を記録した。埼玉医科大学病院(埼玉県毛呂山町)では、救急科と緩和医療科を融合し、高齢者の救急搬送を減らす日本初の試みを進めている。この取り組みを進める同院救急科・緩和医療科教授の岩瀬哲氏にインタビューした。

救急再搬送削減には緩和医療と介護支援が必要

─埼玉医科大学病院では救急科と緩和医療科を融合し、どのような取り組みを進めているのですか。

救急搬送患者の増加が問題になっていますが、年々増えているのは高齢者の搬送です。総務省の「救急・救助の現況」(速報値)によると、子どもや成人の搬送はほぼ横ばいなのに対し、1999年に救急搬送患者の36.9%だった高齢者の割合が、2019年には60%に達しています。

事故種別にみると、全国的に高齢者の救急搬送の約8割は、転倒がきっかけです。この状況は当院でも同じで、脱水などを起こして転倒した後、動けなくなって救急搬送される高齢者が増えているのですが、そういう方たちの大半はいわゆるロコモティブシンドロームやフレイルの状態で、治療しないと命に関わる急性期の病気や外傷があるわけではありません。

ところが、急性期疾患ではないので入院が必要ない「軽症」と判断し自宅へ帰すと、また転倒したり急激に体調を崩したりして救急再搬送されるという悪循環に陥ります。2017年に当院に救急再搬送された65歳以上の高齢者の初回搬送時の転帰を調べたところ、帰宅が61.6%、入院が36.8%で、統計学的有意に帰宅患者の再搬送率が高いという結果でした。

そこで、当院では、救急搬送されてきた高齢者の救急の入り口を救急科が、救急出口を緩和医療科が担当する体制を構築し、高齢者の救急搬送の予防に取り組んでいます。もちろん、心血管疾患や骨折して手術が必要な場合など、急性期治療が必要な患者さんは各診療科につなげます。

臓器別の診療科では治療が難しいロコモやフレイルの患者さんは救急科・緩和医療科の病床に入院してもらい、痛みの軽減や症状の緩和などの治療をすると共に、地域包括ケアにつなげて、介護支援を行っています。

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