新型コロナウイルスの感染拡大を受け、政府は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者受入病床を確保するための補助や、資金繰りを支援するための無利子・無担保の融資を行うなど、3兆円規模の財政措置を講じている。中でもすべての保険医療機関が「真水」で受け取ることができるのが、医療機関や薬局などが取り組む新型コロナウイルスの感染拡大防止策の費用を補助する「医療機関・薬局等における感染拡大防止等支援事業」。本欄では、多くの都道府県で申請締め切りが迫っている同事業の支援金の概要を解説する。
「医療機関・薬局等における感染拡大防止等支援事業」は、2021年第二次補正予算に盛り込まれた「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)緊急包括支援事業」の1つで、各都道府県が窓口になる。COVID-19患者の受け入れの有無に関係なく、すべての保険医療機関や保険薬局、指定訪問看護事業者が申請可能で、厚生労働省は事業規模として2589億円を見込んでいる。
感染拡大防止対策に要する費用に加え、院内等での感染拡大を防ぎながら地域で求められる医療を提供する体制を確保するための費用も幅広く補助の対象となる。
厚労省は補助対象となる感染防止策として、①共通して触れる部分の定期的・頻回な清拭・消毒等の環境整備を行う、②待合室の混雑を生じさせないよう、予約診療の拡大や整理券の配布等を行い、患者に適切な受診の仕方を周知、協力を求める、③発熱等の症状を有する新型コロナ疑い患者とその他の患者が混在しないよう、動線の確保やレイアウト変更、診療順の工夫等を行う、④電話等情報通信機器を用いた診療体制を確保する、⑤医療従事者の院内感染防止対策(研修、健康管理等)を行う─などの取組を例示。7月20日から申請がスタートしている。
しかし厚労省や各都道府県に対象範囲に関する疑義が多く寄せられたことから、日本医師会が厚労省に強く働きかけ、例示している取組に加え、①日常業務に要する消耗品(固定資産に計上しないもの)、日常診療に要する材料費(衛生材料、消毒薬など、ただし直接診療報酬等を請求できるものは対象外)、換気のための軽微な改修(修繕費)、水道光熱費、燃料費などの「需用費」、②電話料、インターネット接続等の通信費、医療施設・設備に係る火災保険、地震保険、動産保険の保険料、休業補償保険の保険料、受付事務や清掃の人材派遣料などの「役務費」、③受付事務や清掃の外部委託費などの「委託料」、④既存の診療スペースに係る家賃、既存の医療機器・事務機器のリース料などの「使用料」「賃貸料」─など、日常業務に必要な費用も補助の対象となりうることが明確化された。
補助額の上限は、病院が200万円+5万円×病床数、有床診療所が200万円、無床診療所が100万円、薬局・訪問看護ステーション・助産所が70万円となっている。
ポイントは、これから行う取り組みについても、2020年4月1日から2021年3月31日までにかかる費用は補助の対象となる点。申請日以降に発生が見込まれる費用は、これまでに支出した費用と算出した概算額を合計して申請する。申請は1回のみで、各都道府県の国民健康保険団体連合会に毎月15日から末日までの間に行う。
12月10日に厚労省が公表した各都道府県の補助金の交付状況と申請期限をまとめたのが表。交付件数と金額は全国で7万5846件、約950億円に上っている。全国の医療機関(歯科を含む)、保険薬局、訪問看護ステーション、助産所の合計は約32万施設、単純計算で全対象施設の23.6%に交付されている状況だ。長野県、福井県は申請書類の確認などの作業が遅れていることから交付が後ろ倒しになっている。
申請締め切りは多くの都道府県が2021年2月末に設定。山梨県、富山県はすでに受付を終了している。相談に応じて受付は可能ということだが、両県の施設は早めに相談する必要がある。
このほか原則年内で受付を終了するのは、福島県、東京都、神奈川県、石川県、徳島県、宮崎県。今回の支援金は一般的な補助金と異なり、事業計画についての審査は実質的に行われず、基準を満たしていれば原則としていったん支給されるため、各都道府県の特設サイトで締め切りや申請書類の確認をしてほしい。