【壊死した心筋を生存心筋に置き換える画期的治療法】
細胞を用いた心筋再生療法は,壊死した心筋を生存心筋に置き換えるという,これまでの虚血性心疾患や心不全の治療ではなしえなかった効果をもたらす画期的な治療法として期待される治療法である。2000年代初頭から様々な基礎研究,臨床研究が行われており,その効果や機序が徐々に明らかになりつつある。
海外では主に骨髄幹細胞や間葉系幹細胞,心筋幹細胞といった細胞種を用い,カテーテルにより心筋内に直接注入する方法や,冠動脈内に注入する方法で細胞を導入する研究が行われている。基礎研究だけでなく,既に多くのphase 2,3の臨床試験が進行しておりメタ解析の結果も数多く報告されているが,今のところその効果は左室駆出率にして3~5%と限局的である1)。この効果を高める方法として,細胞の導入回数を1回ではなく複数回行うことにより,高い心機能改善効果が得られることが報告されており,今後の発展が期待される。
一方,わが国ではシート状にした細胞を開胸手術により心臓表面に貼付する細胞導入法を中心に研究されており,筋芽細胞シートを用いた臨床研究ではその安全性が報告され2),心機能改善効果もみられた。さらに,iPS細胞から作製した細胞シートを用いた臨床研究が18年,厚生労働省に認可され,今後の研究の進展と結果が期待される。
【文献】
1) Gyöngyösi M, et al:Circ Res. 2018;123(2):301-8.
2) Sawa Y, et al:Circ J. 2015;79(5):991-9.
【解説】
時田祐吉 日本医科大学循環器内科講師