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無菌性髄膜炎(成人)[私の治療]

No.5052 (2021年02月20日発行) P.38

石川晴美 (国立病院機構埼玉病院脳神経・認知症センター部長)

登録日: 2021-02-21

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  • 狭義には①急性発症の髄膜炎症状,②髄液グラム染色・培養が陰性,③髄膜近傍の感染性病変や全身性疾患がない,④経過が良好で比較的短い期間で回復,⑤髄液細胞数増多,を特徴とする急性市中感染症候群として定義される。ウイルス性が最多の病因であるが,広義には感染性〔非ポリオエンテロウイルス属,ムンプスウイルス,単純ヘルペスウイルス2型(HSV-2),EBウイルス,サイトメガロウイルス,水痘・帯状疱疹ウイルス,ヒト免疫不全ウイルス,リケッチアなど〕の他に,非感染性(自己免疫介在性疾患,がん,薬剤など)の多くの疾患が原因となる。単一疾患ではなく,多種多様の疾患が含まれる疾患概念である。

    ▶診断のポイント

    【臨床所見】

    発熱,頭痛,嘔吐,羞明などが急性に発症する。新生児・乳児では大泉門膨隆や易刺激性がみられることもある。項部硬直,Kernig徴候,Brudzinski徴候などの髄膜刺激徴候は約半数程度であるが,存在する場合には髄膜炎の陽性的中率は8割程度とされる。流行性耳下腺炎では耳下腺腫脹,HSV-2では主に性器の水疱性病変を認める。再発性の場合にはモラレ髄膜炎を,リンパ節腫脹を認めるならEBウイルスやヒト免疫不全ウイルス感染症を考慮する。

    【検査所見】

    髄液細胞数が5/mm3以上(生後2カ月未満では15/mm3以上)で100~500/mm3程度が多く,蛋白は微増,糖は正常~やや低下している。エンテロウイルスによる髄膜炎の約2/3が病初期には多核球優位であるが,12~24時間後にはリンパ球優位になる。髄液の塗抹・培養検査では陰性である。一般血液検査では異常を認めないことが多い。がん性髄膜炎では造影MRIでくも膜下腔の造影剤増強効果を認める。髄液細胞診は単回では感度は高くないが,繰り返すと感度は上昇する。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    通常,入院治療が必要であるが,多くの場合にはウイルス性であり,消炎鎮痛薬や脱水に対する補液など対症療法が中心となる。また,頭蓋内圧が亢進している場合には濃グリセリン,D-マンニトールなどの浸透圧利尿薬を投与する。HSV-2や水痘・帯状疱疹ウイルスおよびウイルス以外の病原体では,特異的治療が必要である。
    なお,グラム染色が陰性であっても,細菌性髄膜炎が疑われる場合には経験的な抗菌薬併用療法は必須である。

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