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肩峰下インピンジメント症候群[私の治療]

No.5052 (2021年02月20日発行) P.40

高橋憲正 (船橋整形外科病院スポーツ医学・関節センターセンター長)

登録日: 2021-02-22

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  • インピンジメントとは「衝突」という意味であり,肩峰下インピンジメント症候群は,肩峰と腱板の衝突により生じる痛みや可動域制限を引き起こす病態の総称である。そのうち,腱板断裂や石灰性沈着性腱板炎などの明らかな解剖学的異常がない病態を,狭義の肩峰下インピンジメント症候群としている。肩甲上腕関節のアライメント異常や肩甲胸郭関節の柔軟性の低下によって,機能的なインピンジメントを生じることが主病態で,オーバーヘッド競技者の利き手側に生じることが多い。また,中高年においても労作やスポーツ活動で生じることがあり,凍結肩や腱板断裂との鑑別が必要である。

    ▶診断のポイント

    まず,問診にて痛みの性状(夜間痛,安静時痛,動作時痛の有無)を聴取する。ついで可動域制限の有無を調べる。肩峰下インピンジメント症例では,下垂位外旋に比べ屈曲や外転の制限が強く出ることが多い。これは,全方向性に高度な制限を生じる凍結肩との鑑別に有用である1)。また,Neer,Hawkinsのインピンジメントテストなどの疼痛誘発テストで痛みを生じることが多いが,特異度は低いとされている2)。筆者は外転位,屈曲位,内転位の3方向で疼痛と筋力を評価し,総合的にインピンジメントの有無を判断している。また,オーバーヘッド競技者では,肩甲胸郭機能障害を起因とするインピンジメント症状が多いため,combined abduction test(CAT),horizontal flexion test(HFT)を左右で比較し,肩甲胸郭機能の指標としている3)

    典型的な肩峰下インピンジメント症候群の症例は,動作時痛が主体で,屈曲に中等度の制限があり下垂位外旋制限は軽度である。また,外転位の疼痛誘発テストが陽性で,CAT,HFTで柔軟性の低下を認める。肩峰下滑液包へ局所麻酔薬とステロイドの注射をすると,可動域と疼痛が劇的に改善することが多く,診断の一助となる。狭義の肩峰下インピンジメント症候群では,構造的な異常を除外することが必要であり,単純X線で骨折後の変形や石灰沈着を認めず,MRIや超音波検査で腱板断裂を認めないことで確定診断となる。

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