以前は真性クループと仮性クループに分類されていた。真性クループはジフテリア感染に伴う声門下腔の肥厚で,三種混合ワクチンの普及により,近年では発症をみていない。ジフテリア感染以外のクループを仮性クループと称していたが,最近ではクループと言えば仮性クループを指す。原因はパラインフルエンザ,RSウイルス,インフルエンザウイルスが多い。生後6カ月~5歳児に多く,ピークは2歳児前後である。
声門下は気道の中で最も狭い場所であり,強い炎症で急激に腫脹する。呼吸困難・窒息となる可能性をふまえて診療にあたることが重要である。以下に小児気道の特殊性を示す。
①軟骨が柔らかく吸気時につぶれやすい,②粘膜下組織が粗なため炎症で腫脹しやすい,③自己防衛(免疫)が未熟で感染を受けやすい,④喀痰などの排出力が弱い,⑤訴えがわかりづらい,⑥突然病態が変化する,⑦喉頭の位置が高い
次に鑑別すべき上気道狭窄疾患を示す。
鼻・咽頭疾患:新生児の鼻閉(後鼻孔閉鎖),咽頭浮腫,舌根膿瘍,口腔底フレグモーネ,咽後膿瘍,舌根沈下,鼻・副鼻腔腫瘍,咽頭腫瘍
喉頭疾患:喉頭軟化症,声帯麻痺(両側),声門下狭窄,急性喉頭蓋炎,急性声門下腔炎(真性・仮性クループ),喉頭浮腫,喉頭腫瘍,喉頭外傷
気管・気管支疾患:気管形成不全,気管食道瘻,気管外傷,気管内肉芽,気管腫瘍,外側からの圧迫(甲状腺,食道,縦隔,大血管疾患)
異物:鼻咽腔,咽頭,喉頭,気管
以上を念頭に置き,症状・検査から診断を導く。典型的な症状は吸気性の喘鳴で,胸骨上部や心窩部の陥没呼吸を示す。犬吠様咳嗽は「ケンケン」という甲高い咳が特徴的である。
確定診断には,頸部単純X線検査でいわゆるペンシルサイン(声門下の先細り)の確認を行う。喉頭内視鏡検査で肥厚した声門下を認めれば確定である(図)。この診療行為は患児にとっては拷問のようなもので,強く泣き叫ぶために腫脹が悪化する可能性もある。声門下狭窄を疑ったら,血中酸素飽和度測定や緊急挿管ができる体制を準備する。一方,急性喉頭蓋炎などの重要な疾患の鑑別には有効な手段である。CTなど患児の鎮静が必要な検査行為は,呼吸抑制など危険を伴う可能性があり,慎重に判断する。
上記診断で気道狭窄の程度を鑑別し,症状が軽度であれば,ボスミン®(アドレナリン),デカドロン®(デキサメタゾンリン酸エステルナトリウム)の咽頭吸入や消炎薬の投与を行う。重症であれば,緊急対応のできる集中治療室などに入院させる。自身の診療体制で可能かの判断は重要である。困難を感じたらしかるべき診療機関に応援を要請する。
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