株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

低コストの電子カルテは安定したクリニック運営の重要な基盤となる[クリニックアップグレード計画 〈システム編〉(26)]

No.5052 (2021年02月20日発行) P.14

登録日: 2021-02-19

最終更新日: 2021-02-19

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

コロナ禍で多くの医療機関が患者減に苦しんでいる。厳しい環境で収益を上げるには、経営的な視点が不可欠になる。連載第26回は、低コストのレセコン一体型電子カルテを活用することでランニングコストを抑え、診療内容の大幅な変更による減収の影響を最小限にとどめながら、効果的なWebマーケティングで3期目に黒字化を達成したクリニックの事例を紹介する。

お茶の水循環器内科は2014年に東京・神田小川町に開業したお茶の水内科が前身。院長の五十嵐健佑さんは、慶應大医学部在学中から医療関連のコンサルティング会社で働き、訪問診療や医療人材紹介の会社を設立するなどの経歴の持ち主でデジタルハリウッド大学の専任准教授も務める。

開業に当たっては、ビジネス経験で培ったマーケティング的視点から、「仕事が忙しくて心筋梗塞後の治療が途絶えてしまったり、検診で指摘された生活習慣病を放置してしまったりする人がたくさんいるはず」という仮説を設定。大学病院や専門病院が立ち並び、ビジネスマンが行き交う地域に狙いを定め、JR御茶ノ水駅から徒歩圏内の小さなビルの4階に開業した。五十嵐さんの仮説は見事に当たり、開業3期目には年間1万人以上来院するクリニックとなった。

開業4年目で一般内科から循環器クリニックに

同院の運営は順調そのものだったが、五十嵐さんは2018年1月、一般内科を閉鎖。循環器診療に特化した「お茶の水循環器内科」として再スタートした。

「クリニック運営は順調でしたが、夜間や土日も診療している『便利屋さん』になってしまっていると感じていました。そこで『心血管疾患の一次予防』という開業の理念に立ち返り、循環器内科一本で行こうと決めたのです。診療内容変更後、初年度は収益が半減しました。想定してはいたものの、『これはまずい』と思い、2年目には、心臓画像クリニック飯田橋と心臓血管研究所付属病院(六本木)と当院を含めた3ヵ所で画像検査、PCI、アブレーション、フォローを行う連携体制を構築できたこともあり、収支イーブンまで持ち直すことができました」(五十嵐さん)

「ダイナミクスはコスパが抜群」

五十嵐さんがクリニック経営で重視しているのは、コストコントロール。一般内科の閉鎖というリスクを伴う決断ができた背景には、同院の低コスト体質がある。その代表的存在が、レセコン一体型電子カルテシステム「ダイナミクス」(http://www.superdyn.jp/dyna/index.html)の活用だ。ダイナミクスは元エンジニアで内科医の吉原正彦氏が、医師目線のニーズを基に開発したソフトで、全国5000以上のクリニックに導入実績がある。最大の特徴は、月額の保守料が1万1000円と低コストであること。レセコンや電子カルテは医療機器と異なり、それ自体が診療報酬を生み出すものではないため、少ない負担でクリニックも導入・運用しやすい価格設定になっている。

「ダイナミクスは圧倒的にコストパフォーマンスにすぐれています。またマウスをクリックするだけで疾患名などが表示されたり、検査結果が時系列で把握できたりするなど診療を効率化できる機能が備わっているので事務スタッフの残業もほとんど必要ありません。WindowsのAccessをベースに構築されていてカスタマイズしやすいところも特徴ですが、標準でも機能的には十分です。当院では視認性を高めるために色をつける程度にしています()。クリニックの開業時はしばらく赤字基調になるので、ランニングコストを抑えることが大切です。開業を考えている先生や使用中の電子カルテからの乗り換えを検討している先生にはおすすめしたいソフトです」(五十嵐さん)

Webサイトで一歩踏み込んだ情報を発信

コロナ禍においても同院の運営は順調で、地域のクリニックが患者減に苦しむ中、前年比プラスの収益を確保している。その秘訣の1つが、Webサイトを通じた積極的な情報発信だ。循環器疾患に関する論文の和訳が毎日のようにアップされ、「循環器内科.com」というWebサイトも運営。患者がエビデンスに基づく正しい情報を収集できるような取り組みを行っている。

「今の患者さんは自分の疾患や症状に関する情報収集に熱心です。当院では『かかりつけの先生には言えないけど、この薬を試してみたい』とか『この病気なのではないか』と悩んでいる人に向けたコンテンツを提供しています。例えば、胸が痛いとか動悸がするとかで救急車を呼んだものの、すぐに自宅に帰らされるケースは少なくありません。家に戻った患者さんは不安なのでいろいろと検索します。そこで『急性冠症候群疑いで救急外来受診後は、負荷心電図より冠動脈CTで直接的に冠動脈を評価したほうが安全』という情報にたどり着いて、『診てもらいたい』と来院してくれるケースが増えています。今後はSEO対策など通常のWebマーケティングだけでは差別化が難しくなるので、患者さんのニーズに対応できる“一歩踏み込んだ”情報発信が重要になると考えています」

関連記事・論文

もっと見る

関連書籍

関連物件情報

もっと見る

page top