ファロー(Fallot)四徴症は,①心室中隔欠損,②右室流出路狭窄,③大動脈騎乗,④右室肥大,を四徴とするチアノーゼ型心疾患である。全先天性心疾患の5~10%,チアノーゼ型心疾患の60~70%を占める。染色体異常(ダウン症候群,22q11.2欠失症候群)を合併することがある。多くは小児期に外科的修復が行われているが,肺動脈弁閉鎖不全,右室流出路狭窄,心室性不整脈など,成人期になって新たに出現する合併症が問題となる。再手術を必要とする患者は少なくない。
小児期にファロー四徴症の手術を受け,成人に達して無症状であっても,すべての患者で定期的な経過観察が必要である。
成人期に達したファロー四徴症術後例にみられる問題点を以下に示す。
(1)肺動脈弁閉鎖不全,(2)肺動脈弁閉鎖不全や三尖弁閉鎖不全による右室拡大と機能不全,(3)遺残右室流出路狭窄,(4)肺動脈狭窄(分岐部狭窄および末梢肺動脈低形成),(5)不整脈〔①持続型単形性心室頻拍,②房室ブロック,心房粗動・細動〕,(6)突然死,(7)遺残短絡〔心室中隔欠損症(VSD)や心房中隔欠損症(ASD),卵円孔開存(チアノーゼ,血栓塞栓)〕,(8)進行性の大動脈弁閉鎖不全
成人期ファロー四徴症における最大の問題は,肺動脈弁閉鎖不全に対する治療介入のタイミングである。不整脈や心不全などの自覚症状のある症例はわかりやすいが,緩徐に進行する右心不全は自覚症状を認識していないことが多く,フォローアップでは経時的,客観的な評価と適切な時期の治療介入が重要である。肺動脈弁閉鎖不全の病状の進行には,①右心負荷の初期より不整脈が出現する,②右室容量負荷により右室機能不全から右心不全症状が出現する,③右心のさらなる容量負荷により右室拡張末期圧が上昇し,拡張期に心室中隔が左室側に凸になることで左室の拡張障害が生じてくる(末期),の段階がある。
右室-肺動脈収縮期圧較差が50mmHg以上か,右室/左室収縮期圧比0.7以上がカテーテル治療の適応であるが,これ以下でも下記の合併病変があれば手術を考慮する。
①進行性の右室拡大や右室機能低下を伴う場合,②肺体血流比(Qp/Qs)1.5以上のVSDを伴う場合,③有症状で,高度の大動脈閉鎖不全を伴う場合,④いくつかの遺残病変を伴い,右室拡大や右室機能低下を伴う場合
修復術後の長期遠隔期に起こる不整脈関連突然死の原因は,心室頻拍が最も多く,上室性頻拍,心房粗動・細動,完全房室ブロックなども一因となる。発生頻度は10年で2.5%,25年以上の経過で3~6%である。心内修復術後の突然死の危険因子をまとめると,①心内修復時の高年齢,②高度の右室流出路狭窄,③中等度~重度の肺動脈弁閉鎖不全や狭窄による右室機能低下,④ホルター心電図やEPS(心臓電気生理学的検査)で誘発される心室頻拍の既往,⑤左室機能低下,⑥QRS幅≧180msec,が挙げられる。
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