モートン病は踏み返し時に中足骨頭レベルの足底に激痛を生じる疾患で,中年女性に好発する。総底側趾神経ならびにそれから分岐した固有足底趾神経が,圧迫や摩擦を受けて生じる摩擦性神経障害である。先の細い靴を履くと荷重時に骨頭間が広がらず,圧迫の要因となる。慢性的なストレスにより神経が肥大し,偽神経腫を形成する。モートン神経腫と呼ばれることもある。かつては欧米において多い疾患とされていたが,わが国でも生活の欧米化や本疾患への認識が広まったこともあり,近年増加傾向にある。
症状は「刺すような痛み」と表現されることが多く,歩行時に著しく,安静時に軽減する。発症には靴の関与が示されており,パンプスなどきつい靴を履いたことがないかを必ず聴取する必要がある。裸足で床の上を歩くときにもしばしば疼痛を訴えることがあるので,疼痛が生じる状況を丁寧に問診する。靴を履いたまま長時間立つ仕事などで発症することも多いので,職業歴も忘れず聴取する。
足底から趾神経を触知することが最も重要である。圧迫により疼痛を再現させることで診断がつけられる。発生部位は第3趾間が最も多く,ついで第2趾間にみられ,第1,4趾間にみられることは稀である。第3趾間に多いのは,脛骨神経から分岐した内側・外側足底神経のそれぞれの枝が第3趾間部で吻合し,神経が太くなっていることに起因している。中足部を両側から強く握ると疼痛が再現されることがある(Mulderテスト)。また2/3の例では趾間の感覚低下を伴う。
超音波検査の感度が高い。最近では超音波診断装置の進歩が著しく,まずは超音波検査を試みる。MRIでは偽神経腫はT1強調像で低信号に描出される。T2強調像は,中足趾節間滑液包炎との鑑別に有用である。荷重をシミュレーションしてMRIを撮像すると神経腫が骨頭間に入り込み,診断が難しいことがあるので,非荷重で撮像する。
荷重時に,罹患した足趾間が広がる趾間開大徴候がみられることがあり,特に第2趾間罹患例に多いが,関節リウマチの初発症状であることがあるので,注意を要する。これはリウマチ性骨頭間滑液包炎が原因している。丁寧な触診により,中足趾節関節の底側板障害や胼胝による中足痛と鑑別しなければならない。また,フライバーグ病や疲労骨折など,中足部に疼痛を訴える疾患も考慮する必要がある。
まず,保存治療を行うことで大多数の症例は症状が軽快する。手術治療は疼痛の強い例に選択されることがある。
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