ラッサ熱は西アフリカに常在するウイルス性出血熱である。病原体のラッサウイルス(アレナウイルス科)はヤワゲネズミが保有する。病原体保有動物や患者の体液との接触によって感染する。乾季(11~4月)を中心に年間5万人の患者発生が推定され,致死率は約10%である。初期には発熱,咽頭炎,頸部リンパ節腫大を認めることが多く,数週間の経過で消化器症状,意識障害,漿膜炎等が出現することがある。日本国内では1987年,シエラレオネからの帰国者に1例報告がある。1類感染症に指定されており,感染者は特定または第一種感染症指定医療機関に移送され,治療を受けることとなっている。
アフリカ西部の流行地(図)1)に居住・滞在歴のある発熱患者にはラッサ熱を疑う。頻度の高いマラリアや感染性下痢症をまず否定することが重要である。流行地を離れて3週間以内の発症,かつ病原体保有動物や患者との接触歴を認める場合には蓋然性が高い。
1類感染症患者(疑似症患者を含む)の発生は国の健康危機管理事例となるため,行政機関と早めに連携しながら診断を進めることが肝要である。病原体および血清診断は国立感染症研究所において実施されるため,最寄りの保健所に相談の上で,適切な検体を提出する。
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