機械的血栓除去術(MT)の適応がある脳梗塞例に対する、経静脈的血栓溶解療法(IVT)スキップの有用性が定まらない。わが国で実施されたSKIP試験では「IVT後MT」に対する非劣性は証明されなかったが、中国のDEVT試験ではかろうじて非劣性が確認された。さらに欧米人を対象としたランダム化試験“MR CLEAN-NO IV”においても、「IVT後MT」に対する非劣性は証明されなかった(本学会で報告)。このような知見に対しRaul G Nogueira氏(エモリー大学、米国)は、適応をより細かく見きわめるべきではないかと主張する。根拠となったのは上記SKIP、DEVT試験データを用いた“SHRINE”研究である。3月17日からオンライン開催された国際脳卒中学会(ISC)にて、Late Breakerとして報告された。
SHRINE研究はSKIP、DEVT試験参加例の患者レベルデータ併合解析である。
対象は、両試験参加例中、発症後4.5時間以内で治療前の修正ランキンスケール(mRS)が「0-1」、NIHSS「≧6」で、かつ画像上で虚血傷害が早期と判断された、頭蓋内内頸動脈/中大脳動脈本幹閉塞脳梗塞438例である。221例が「IVT後」MT群、217例は「IVTスキップ」MT群にランダム化されていた。両群間の背景因子に差はない。
平均年齢は72歳、治療前NIHSS中央値は16、ASPECTS中央値は8だった。またおよそ4分の1が頭蓋内内頸動脈閉塞例だった。「発症から穿刺までの時間」(中央値)は、「IVT後」MT群で188分、「IVTスキップ」MT群は170分だったが、有意差とはならなかった(P=0.06)。
その結果、1次評価項目である「90日後mRS:0-2」のオッズ比(OR)は、「IVTスキップ」群で1.23となったが、95%信頼区間(CI)は「0.84-1.79」であり、有意差とならなかった。さらに非劣性マージン下限である0.85も下回ったため、非劣性も確認されなかった。同様に、「IVTスキップ」群では「90日間生存」ORも1.06(95%CI:0.61-1.84)という結果だった。
一方、サブグループ解析からは興味深い結果が得られた。すなわち、「発症から穿刺までの時間」が「180分」を超えると、「IVTスキップ」群の「90日後mRS:0-2」ORは2.28(95%CI:1.18-4.38)と有意に高く、交互作用P値は0.02だった。また交互作用P値は0.06だったものの、内頸動脈閉塞では「IVTスキップ」群のORが有意に高く(3.04、1.16-8.43)、病型により有効性に差がある可能性が示された。心房細動(AF)合併例では、「IVTスキップ」群の90日死亡リスクは、「IVT後」群に比べ、有意に低かった(交互作用P値=0.03)。AF合併例における症候性頭蓋内出血リスクも同様だった。
Nogueira氏は、これらサブグループにおける「IVTスキップMT」の有用性検証を訴えた。