乾癬は慢性,難治性の炎症性皮膚疾患で,炎症と毛細血管拡張を伴い,表皮細胞のターンオーバー亢進による過増殖と分化異常をきたす。皮膚の免疫応答異常をもとに,活性化T細胞がIL-17A等のサイトカインを介して表皮細胞を刺激するもので,遺伝素因と環境因子が関わる。患者数は世界人口の1~3%に及ぶ。国内では0.1~0.2%前後と少なく,男女比2:1,主に成人発症で,家族歴を5%ほどに認める。
臨床上は5型に分類する。
①尋常性乾癬:乾癬全体の80~90%で,皮膚症状のみ。個疹は銀白色の鱗屑を付す境界明瞭な角化性紅斑局面で,頭部,肘,膝,下腿伸側,腰背部に好発。
②滴状乾癬:小児に多く,上気道感染に続き小型で滴状の乾癬皮疹が多発。
③膿疱性乾癬:発熱や倦怠感とともに無菌性膿疱が紅斑局面上に多発し,再発を繰り返す重症型。
④乾癬性関節炎(関節症性乾癬):関節痛や変形を伴う乾癬で,10~15%程度。脊椎関節炎の一型。
⑤乾癬性紅皮症:皮疹が広範囲で紅皮症を呈する。
機械的な刺激が皮疹を誘発し(ケブネル現象),半数の患者で軽度のかゆみがある。点状陥凹や爪甲剥離,肥厚など爪変化も伴う。
特徴的な皮疹と分布から診断する。生検は,非典型例や他疾患の除外目的で行う。病理組織所見は,錯角化を伴う過角化,表皮肥厚と表皮突起の規則的延長,真皮乳頭の浮腫と毛細血管拡張,炎症細胞浸潤,角層下の好中球集積像(マンロー微小膿瘍)。ダーモスコープで規則的な点状血管の所見あり。膿疱性乾癬は炎症所見が強く,血液検査でCRP高値,白血球増多,低蛋白血症,低カルシウム血症。生検でコゴイ海綿状膿疱を認め,尋常性乾癬の非先行例の多くと先行例の一部で,IL36RN遺伝子変異。
素因があるため,乾癬の治療目標は症状をコントロールし患者QOLを高めることである。基本は外用療法で,軽症例は外用のみで改善する。光線(紫外線)療法は中等症以上に施行する。
内服薬あるいは生物学的製剤を使用する全身療法は,重症例を中心に施行する。その目安はFinlayらの提唱する「10の法則」が有用で,PASI(Psoriasis Area and Severity Index)スコア10以上,皮疹の面積(body surface area:BSA)10%以上,あるいはDLQI(Dermatology Life Quality Index)スコア10以上である。
乾癬の治療は,年齢,性別や合併症の有無,治療アドヒアランス,通院事情,薬剤費など個別の事情も勘案する。副作用を減らし効果を十分に引き出すため,各治療法の併用や交互の施行などを工夫する。経過中の関節症状出現に注意し,早期治療により不可逆的な関節変形を抑える。生物学的製剤,特にTNF阻害薬が関節症状には有効である。
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