SARS-CoV-2では,ゲノム約3万塩基のどこかに2週間に約1回の頻度で変異が起きており,その変異によってウイルスの蛋白質を構成するアミノ酸に変化が起こることがある。特に,スパイク蛋白質に関連したアミノ酸配列が変化すると,ウイルスの感染しやすさ(伝播性)やワクチンで誘導される抗体の中和作用に影響が出る5-1)。
また,従来よりも感染しやすい,あるいは現行ワクチンの予防効果が低下する可能性が指摘されている変異株が世界各地で報告されており,検出された地名から英国型,南アフリカ型,ブラジル型などと呼称されている。
現在わが国では,海外渡航歴のない,あるいは渡航者とのリンクを追えない感染者から変異株が検出されており,既に国内で変異株の感染伝播が発生している。これらの分析・評価が行われ,監視体制は強化されつつあるが,変異株が広く拡大することを可能な限り回避しなければならない。