「スタッフがうつ病の診断書を持ってきた」
うつ病など,スタッフのメンタルヘルスの問題に悩む開業医の先生が増えています。
基本的には身体の不調と同様に,有給休暇の消化を促します。そのまま欠勤が続いたら,「私傷病休職」として扱うのが一般的です。
その後復職できれば,職場でもバックアップをしましょう。復職できなければ「普通退職」というルートになることが多いものです。
なお,休職制度は長期雇用を前提としているので,有期雇用のパートスタッフについては適用しないのが一般的です。
うつ病などメンタルヘルスの不調でよく話題になるのが,「労災認定されるかどうか」ということです。
厚生労働省「過労死等の労災補償状況 」(2019年度)1)によれば,医療業の精神障害の労災請求と支給決定の件数については,次のような結果が出ています。労災を申請しても,認定されるケースは少ないことがわかります。
体の病気やケガに比べると,メンタルヘルスの不調は,業務上の出来事が原因かどうか,判断が難しいところがあります。また,実際ほかの原因でメンタルヘルスの不調を訴えることもめずらしくありません。
「精神障害の労災認定」について,厚生労働省は次に挙げる明確な3つの基準を提示しています2)。
②の「業務による強い心理的負荷」は,スタッフの主観的な訴えで強度を測るようなことをしません。「同種の労働者」=「職種,職場における立場や職責,年齢,経験などが類似する人」が一般的にどう受け止めるかという観点から,客観的に「強」「中」「弱」を判断します。
「強」と判断されたら,③「業務以外の心理的負荷や個体側要因(精神障害の既往歴やアルコール依存など)」がないことを確認して,労災認定されます。「中」「弱」では労災認定されません。
もしも,スタッフから「労災だ!」とせまられるなどトラブルになった場合は,上記の基準をもとに冷静に対処するようにしましょう。