てんかんは慢性の脳疾患で,大脳の神経細胞が過剰に興奮するために症状(発作)が反復性に起こるものであり,人口の1%弱に起こる頻度の高い神経疾患である。てんかん診療においては,発作症状と病歴を整理しててんかんかどうかを判断し,てんかんであれば的確な「発作型分類」(表1)1),「てんかん病型分類」(表2)1),併存疾患の有無,併用薬との相互作用に留意し,適切な抗てんかん薬の選択,効果や副作用のモニタリングをしていくことが重要となる。
典型的な全身の痙攣発作以外にも意識減損や自動症のみを呈するなど多様な発作型があり,失神等との鑑別のためにも,診断にはどのような状況でどのような発作が起こったかという病歴聴取が最も重要である。加えて,脳波,脳形態画像検査,機能画像を含めて総合的に判断する。
初回の非誘発性の発作患者では,原則として抗てんかん薬による治療は開始しないが,神経学的異常,脳波異常,神経画像の異常所見,てんかんの家族歴が陽性の症例では,再発率が高いため治療開始を考慮する2)。
内服治療以外にも,入浴,運転,就職,妊娠などの社会的側面に配慮しながら,包括的な診療を行う必要がある。
部分てんかんの第一選択薬はカルバマゼピン,ラモトリギン,レベチラセタム,ゾニサミド,トピラマート,第二選択薬はフェニトイン,バルプロ酸,クロバザム,クロナゼパム,フェノバルビタール,ガバペンチン,ラコサミド,ペランパネル,全般てんかんの第一選択薬はバルプロ酸,第二選択薬はラモトリギン,レベチラセタム,トピラマート,ゾニサミド,クロバザム,フェノバルビタール,フェニトイン,ぺランパネルが推奨される3)。
腎機能障害,肝機能障害を合併した患者では,肝代謝(バルプロ酸,フェニトイン,カルバマゼピン,フェノバルビタール,ベンゾジアゼピン系),肝腎代謝(トピラマート,ラモトリギン),腎代謝(ガバペンチン,レベチラセタム)に応じて選択し,血中濃度測定が推奨される。
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