表皮や毛包漏斗部由来の良性の皮膚腫瘍である。中年期以降,頭や顔,体幹などに生じ,加齢とともに増加する。老人性疣贅とも言われる。多彩な臨床および組織像を呈する。自然消退はせず,治療は通常必要ないが整容的な目的で行う場合,凍結療法,外科的切除,レーザー治療などが行われる。
褐色~黒色の扁平隆起性の外観を呈し,表面は角化性で乳頭状や顆粒状を呈することが多い。通常瘙痒などの自覚症状は伴わない。肉眼的な臨床像から診断されることが多いが,ダーモスコピーではcomedo-like opening,multiple milia-like cysts,fingerprint-like structures,cerebriform patternなどの特徴的な所見が観察される。角化や黒色調を呈する他の悪性腫瘍(日光角化症,ボーエン病,有棘細胞癌,基底細胞癌,悪性黒色腫など)との鑑別にはダーモスコピーの所見が有用であるが,困難な場合には生検による組織診断が必要になる場合もある。
良性の疾患であり悪性化するものではないので,治療は基本的には不要であることを患者に丁寧に説明する。治療法としては凍結療法,外科的切除,レーザー治療などの選択肢がある。整容的な目的から治療を希望する場合,侵襲の少ない方法から検討する。
まず凍結療法を行うことが一般的である。超低温で凍結,融解を繰り返すことにより,細胞を壊死させる方法である。低温源として液体窒素(-196.8℃)が用いられることが多い。かつてはドライアイス(-60℃)も用いられたが,現在はほとんど使用されない。凍結療法では1回の治療で確実に除去できるとは限らず,数回の通院が必要になる場合がある。また,治療後に色素沈着や色素脱失を残す場合がある。なお,脂漏性角化症に対する凍結療法は,平成30年度の診療報酬改定により,「いぼ等冷凍凝固法」として保険適用となった。
凍結療法で治療効果が不十分な場合,悪性腫瘍との鑑別が必要な場合などは外科的切除を行う。また,患者の希望によりレーザー治療を行う場合もある。使用するレーザーの種類としては,炭酸ガスレーザーやEr:YAG(エルビウムヤグ)レーザーなどがある。外科的切除やレーザー治療では,1回の施術での除去が可能である。Er:YAGレーザーと凍結療法の治療効果を比較した試験では,1回の治療での治癒率は液体窒素の68%に対し,Er:YAGレーザーで100%であった,との報告がある1)。外科的切除では肥厚性瘢痕を残す可能性がある。一方,レーザー治療では施術後の瘢痕が目立ちにくく仕上がるが,保険適用はなく自由診療となる。
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