代謝性アルカローシスは血液中のHCO3-濃度が上昇することによりpHが上昇した状態である。代償性の低換気によりpCO2が上昇する。代謝性アルカローシスは特に入院症例で高頻度であるが,積極的な補正を考慮する状況は限られている。代謝性アルカローシスによる体内への影響として心血管系異常(血管収縮促進,不整脈),電解質異常(低カルシウム血症,低カリウム血症)がある。pHが7.6以上で,心血管疾患を有する場合やテタニー・痙攣,不整脈などの症状があれば積極的な補正を考慮する。それ以外は原因疾患の是正や原因薬剤の中止を行う。
消化管,腎臓からの酸(H+)の喪失か,アルカリ(HCO3-)の増加によってpHが上昇する(表)。通常,腎臓は過剰なHCO3-を尿中に排泄し,代謝性アルカローシスは補正される。したがって,代謝性アルカローシスが持続するのは何らかの理由で腎臓からのHCO3-排泄が障害されていることを意味する。腎臓からのHCO3-排泄が障害される理由として,有効循環血漿量低下,アルドステロン症,低カリウム血症,腎機能障害などが挙げられる。
代謝性アルカローシスの鑑別は,まず有効循環血漿量の低下がないかを確認する。低下している場合には尿中Cl濃度を測定し,消化管からの喪失か,腎臓からの喪失かを鑑別する。この病態はCl反応性代謝性アルカローシスで,かつては「contraction alkalosis」と呼んでいたが,いわゆる脱水と異なりCl喪失が本態なので,今では「Cl depletion alkalosis」という呼称に変わった。「Cl depletion alkalosis」でない場合には,高血圧の有無によってアルドステロンの作用亢進の病態とそれ以外を鑑別する。
代謝性アルカローシスでは細胞外液のカリウム,マグネシウム,カルシウム,そしてリンの低下を生じる。特に低カリウム血症はほぼ必発で,低カリウム血症も治療対象となることが多い。これは,代謝性アルカローシスに対する細胞内緩衝作用により,K+はH+と交換で細胞内に移動することと,尿中への排泄増加が関与している。
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