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低身長[私の治療]

No.5077 (2021年08月14日発行) P.47

伊藤純子 (虎の門病院小児科部長)

登録日: 2021-08-16

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  • 低身長は一般小児の中に一定の頻度で存在する。低身長そのものは治療の対象にならないため,低身長の原因となっている疾患を適切に鑑別し,その疾患に応じた治療をすることが重要である。低身長の基準は便宜的に同年齢の標準値-2SDを下回っている場合と定義1)されるが,これは2.3パーセンタイルにあたり,40~50人に1人の頻度となる。これが-2.5SDでは0.62パーセンタイル,-3SDでは0.14パーセンタイルで,低くなるほど疾患を持っている可能性が高い。

    ▶診断のポイント

    低身長をきたす疾患は多岐にわたり,小児では表の中の下線の7疾患が成長ホルモン(GH)治療適応となっている。低身長をきたす疾患というと,「成長ホルモン分泌不全性低身長症(GHD)」がまず想起されるが,本疾患の頻度は低身長児の10%に満たない。鑑別の際には,まず成長曲線を作成して児の成長を正確に把握する。ついで基本的な問診・診察を行い,総合的な鑑別診断を進めていくことが必要である2)

    病歴では,両親・同胞の身長,出生時の身長・体重,骨盤位や新生児仮死の有無などを確認する。SGA性低身長症としてGH治療適応となっているのは,出生時身長または体重が在胎週数相当の-2SDを下回り,3歳以降でも身長SD値が-2.5SD未満の場合である3)

    身体所見では,小奇形の有無,体幹・四肢の釣り合い,二次性徴などに注意を払う。スクリーニング検査としては,血算・生化学検査・尿検査などの一般検査に加えて,血中インスリン様成長因子(IGF-1)値と甲状腺ホルモンの測定が必要である。手のX線写真を撮って骨年齢の評価も行う。成長速度の低下があって骨年齢の遅延を伴い,IGF-1も低い場合にはGH分泌刺激試験を行う。GH頂値が基準値を超えていれば分泌は正常である。1種類だけでは20%前後の偽陽性があるため,2種類以上の検査で分泌低下があればGHDと診断される1)。GHDの場合,副腎皮質刺激ホルモン(ACTH),ゴナドトロピン系などの他の下垂体ホルモン異常の有無を調べるとともに,頭部MRI撮影を行って脳腫瘍などの器質性疾患を鑑別する必要がある。

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