新生児黄疸の治療目的は核黄疸を回避することである。体重および生後時間に応じた光線療法や交換輸血の適応基準が存在する。治療は一般的に「村田・井村の基準」や「中村(神戸大学)の基準」が用いられるほか,アンバウンドビリルビンを用いた「神戸大学(森岡,2017)の新基準」が提唱されている。
生理的には黄疸は日齢2あたりから出現し,顔面から四肢末端に向かって進んでいき,生後1週間あたりをピークとして,その後軽減していく。健常新生児室においては,皮膚黄疸計を用いて治療の必要な黄疸をスクリーニングする。筆者らはJM-105(コニカミノルタ社製)を用いていて,表示された数字+3が当該時間の光線療法基準を満たす場合,実際の採血でビリルビン値を確認する。生後24時間以内は早発黄疸の発見のため,8時間ごとにチェックする。以降は24時間に一度は確認し,必要に応じて間隔を短縮する。
母体不規則抗体保有の場合は,臍帯血で血液型やクームス試験不規則抗体の検査をするほか,総ビリルビンも測定し,結果を必ず確認する。臍帯血T-Bil>4mg/dLの場合,速やかに入院とし,輸液や光線療法を開始した上で,交換輸血の必要性を念頭に置きつつ,密なフォローを行う。なお,光線療法施行中や施行後は,しばらく皮膚黄疸計による推定が不可能になることに注意する。溶血性黄疸(血液型不適合,遺伝性球状赤血球症など),体質性黄疸,多血症,閉鎖性出血(頭血腫,頭蓋内出血,腹腔内出血,副腎出血など),甲状腺機能低下症,感染症(先天性,後天性いずれも),脱水,哺乳不良,薬剤,母乳栄養など,黄疸増強因子や背景疾患がないかを確認する。その他,胆道閉鎖症をはじめとする直接ビリルビン優位の疾患も見逃してはならない。核黄疸のリスクを回避するため,アンバウンドビリルビン値を可能な限り測定し,治療適応の参考とする。
早発黄疸(生後24時間以内発症)では交換輸血基準を超過していなくても,直ちに輸液と光線療法を多面で開始し,短時間(目安は2~3時間)のうちに再検査を行って交換輸血の必要性を検討する。治療反応性をみて,アルブミン投与を検討する。その他,血液型不適合や母体不規則抗体保有など,免疫性溶血の疑いが濃厚な場合はγ-グロブリンの適応も検討する。交換輸血基準を超過している場合も,説明と同意取得,製剤準備,ルート確保などに一定の時間がかかるので,交換輸血ができるまでの間,輸液療法や光線療法を行っておき,必要であればアルブミン投与やγ-グロブリン投与も行う。血液製剤,生物学的製剤の使用にも文書による説明と同意取得が必要である。
生後24~48時間の発症では,早発黄疸に準ずる状態と考え,治療開始後,原則8時間以内に推移を確認する。まだ哺乳不十分である場合も多いので,光線療法だけでなく積極的に輸液を行い,半日以内に治療反応性を確認する。ABO不適合によるものもしばしば経験される。生後48時間以降の通常の黄疸であれば,光線療法基準との乖離の程度をみて,光線療法のみとするか輸液を併用するかを検討する。黄疸の程度により,治療開始翌日にビリルビン再検査とするか,同日中に再検査とするかを考える。翌日以降,光線基準を2~3下回っていれば,いったん治療終了とする。治療終了の翌日にリバウンドがないことを確認すれば,退院可能としている。
早発黄疸でなくても黄疸増強因子や背景疾患が隠れている場合がある。血液型不適合,感染,頭血腫などの閉鎖性出血,閉塞性黄疸など鑑別や対応が必要なものがないか,診察や病歴確認を入念に行い,必要に応じてビリルビン値以外の検査を追加する。浣腸により便排泄を促すことは腸肝循環を抑制し,ビリルビン排泄に効果的である。
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