医師の休日・時間外労働に対する追加的健康確保措置で、厚生労働省の「医師の働き方改革の推進に関する検討会」は8月4日、長時間の手術などで15時間を超える業務が予定される場合は、「代償休息」の付与を前提とした運用を容認することを決めた。臨床研修医に関しても、一定の要件を満たす場合に限って代償休息を認める運用の見直しを行う。
医師の休日・時間外労働の上限規制が導入される2024年4月以降、Bおよび連携B、C水準(時間外労働等が年1860時間まで)の適用医療機関には、対象医師に対する追加的健康確保措置として、連続勤務時間制限と勤務間インターバルの確保が義務化される。たとえば、通常の日勤および宿日直許可のある宿日直に従事する場合は、始業から24時間以内に9時間の勤務間インターバルを確保しなければならない(15時間の連続勤務時間制限)。
これに対して代償休息は、勤務間インターバルの期間中にやむを得ない理由で発生した労働に従事した場合に、事後的に付与するものと位置づけられる。そのため、勤務間インターバルを8時間取る勤務シフトを組んで事後的に1時間の代償休息を付与するといった、代償休息の付与を前提とした運用は認められていない。
だが、通常の日勤で15時間を超える長時間の手術などを行う場合などに、ルール通りに始業から24時間以内に9時間の勤務間インターバルを確保することは難しい。このため、検討会は、個人が連続して15時間を超える対応が必要な業務が予定されている場合について、代償休息の付与を前提にした勤務シフトの作成などを容認することを決めた。この際の代償休息の付与時期は、翌月の月末までの間ではなく、当該業務の終了後すぐとすることを求める。
一方、C水準のうち、C-1水準が適用される臨床研修医は、医師になったばかりで肉体的・精神的負荷が多いことに配慮し、①連続勤務時間制限・勤務間インターバルの実施を徹底し、代償休息の必要がないようにする、②指導医の勤務に合わせた24時間の連続勤務時間を行う場合は、勤務間インターバルを24時間とする―など独自のルールが定められている。
これらのルールに沿うと、夜間・休日のオンコールや宿日直許可のある宿日直に従事する際に、通常の勤務時間と同態様の労働が少しでも発生した場合は②が適用され、翌日を終日休日にする必要がある。しかしながら、研修期間が短い診療科でこうした対応が続けば、研修期間の大部分が休日となり、期待された研修効果の獲得が難しくなるジレンマが生じる。
このため検討会は、臨床研修医についても、▶臨床研修における必要性からオンコールまたは宿日直許可のある宿日直への従事が必要な場合に限る、▶募集時に代償休息を付与する形式での研修を実施する旨を明示する、▶代償休息の付与期限は原則として必要性が生じた診療科の研修期間内とし、これが困難な場合に限り月末までとする―の3要件をすべて満たす場合に限り、代償休息の付与を認めることを決めた。