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特集:新型コロナ後遺症

No.5078 (2021年08月21日発行) P.18

平畑光一 (ヒラハタクリニック院長)

登録日: 2021-08-20

最終更新日: 2021-08-19

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山形大学医学部卒業。胃腸疾患や膵炎など,消化器全般の診療に携わる。2008年より現職。2020年3月に「新型コロナ後遺症外来」を開設。日本消化器内視鏡学会専門医,日本医師会認定産業医,日本内科学会認定医。

1 新型コロナ後遺症とは
英国国家統計局などは,新型コロナウイルス感染症(COVID-19)罹患後,10人に1人が何らかの後遺症を発症するとしている。
新型コロナ後遺症には集中治療後症候群(PICS)や重症のCOVID-19に伴う臓器の長期的障害も含まれる。しかし,日本のCOVID-19感染では,急性期は軽症であることが圧倒的に多いため,一般の内科外来でこれらを実際に診察することは少ない。実数として多いと考えられるのは,それら以外の後遺症である。

2 症状
ほとんどの患者が「倦怠感」を訴えている。「洗髪だけで1日寝込む」「症状が重いときは,指1本動かすことすらできない」等の,非常に強い倦怠感を訴えていることも多い。頭に霧がかかったようになる“ブレインフォグ”もよくみられ,就業の妨げになる。また,多彩な症状が,もぐらたたきのように出たり消えたりするのも特徴のひとつである。

3 検査
・胸部X線
・心電図
・心臓関連検査(高感度トロポニン,BNP,心エコー)
・甲状腺機能検査
・抗核抗体などの膠原病関連検査
・電解質検査(亜鉛,銅,カリウムなど)
・そのほか,症状に応じた検査

4 治療
・生活療法(特に運動制限が必要となることが多い。安易で無計画な運動療法は禁忌)
・患者が自らの状態をよく観察しながらペースを調整する「ペーシング」が大切
・上咽頭擦過療法
・漢方
・制酸薬
・亜鉛
・抗不安薬,抗うつ薬
・分岐鎖アミノ酸(BCAA)製剤,プロテイン

5 予後
直接生命を脅かすことはなくても,不適切な対応で患者の自死をまねく可能性がある。

伝えたいこと…
患者の多くが周囲の無理解に悩み,重い症状だけでなく,孤独感とも戦うことを余儀なくされている。
新型コロナ後遺症の病態はあまり馴染みがなく,難しく感じるかもしれないが,検査・治療自体は決して難しいことはない。上咽頭擦過療法を行っている耳鼻咽喉科のクリニックなど,地域の医療資源を正しく使うことで,十分に症状の改善が可能である。
医療者側が正しく新型コロナ後遺症を知り,適切に支えることで,患者のQOLを大幅に改善することが可能である。「わからないから」と敬遠することなく,対応をお願いしたい。

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