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ギラン・バレー症候群・フィッシャー症候群[私の治療]

No.5079 (2021年08月28日発行) P.34

叶内 匡 (東京医科歯科大学医学部附属病院検査部/同大学脳神経病態学分野講師)

登録日: 2021-08-26

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  • ギラン・バレー症候群は,急性に発症する免疫介在性多発根神経炎である。典型的にはほぼ左右対称な2肢以上の弛緩性運動麻痺が主症状で,麻痺は顔面筋や嚥下筋,呼吸筋に及ぶ場合もある。感覚障害もしばしばみられ,自律神経障害を伴うこともある。経過は単相性で,多くは2週間以内,遅くとも4週間以内には症状が極期に達し,その後軽快する。約7割で発症前4週以内に上気道や消化器などの先行感染がある。

    フィッシャー症候群はギラン・バレー症候群の亜型で,典型的には外眼筋麻痺(複視),運動失調(ふらつき),腱反射消失,の三徴を呈する。ギラン・バレー症候群を合併する場合もある。フィッシャーの三徴に脳幹障害(錐体路徴候,意識障害など)の加わったものとして,ビッカースタッフ型脳幹脳炎がある。ギラン・バレー症候群の亜型は,フィッシャー症候群以外にも複数が知られている。

    ▶診断のポイント

    【ギラン・バレー症候群】

    基本的に病歴と臨床症候により診断する。①急性発症,②先行感染(感冒症状や下痢など),③ほぼ左右対称な2肢以上の弛緩性運動麻痺とその部位を含めた腱反射低下・消失,がポイントとなる。遅くとも発症4週間以内には極期に達するので,4週間を超えてなお症状が進行する場合は,別な疾患の可能性も考える。補助診断として,神経伝導検査(末梢神経障害の確認),脳脊髄液検査(蛋白細胞解離),MRI(神経根部の造影効果),抗ガングリオシド抗体測定が有用である。

    【フィッシャー症候群】

    同じく基本は病歴と臨床症候による。フィッシャーの三徴が重要であるが,不全型もある。血清抗GQ1b IgG抗体は非常に有用な診断マーカーで,急性期には80~90%の症例で上昇している。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    【ギラン・バレー症候群】

    単相性で自然軽快する比較的予後のよい疾患とされているが,1%程度が死亡,急性期には20%前後が呼吸筋麻痺をきたし,1年後で20%に障害が残るとされる。神経障害が進むほど回復は遅れ後遺症を残す可能性も高くなるため,発症のできるだけ早期から治療を開始するというのが基本的な考え方である。特に発症4週間までの中等症〔支持があっても5m歩けない(Hughesの機能グレード尺度FG4)〕以上に対してはエビデンスがあり,積極的に治療する。それより軽症例に治療が有効かどうかはエビデンスが十分でないが,進行の速い症例や嚥下障害,呼吸障害のある場合は積極的治療を考慮する。発症4週間を超えた場合の治療に関するエビデンスはない。

    治療法には経静脈的免疫グロブリン療法(intravenous immunoglobulin:IVIg)と血漿浄化療法(単純血漿交換法,免疫吸着法,二重膜濾過法)がある。どちらも同程度に有効だが,IVIgのほうが特別な設備や専門技士を必要とせず,実施手技が簡便で,患者の負担も比較的少ないことから第一選択としやすい。IVIgの適応禁忌(ヒト免疫グロブリンに対する過敏性反応の既往)や慎重投与(IgA欠損症,腎障害,脳・心血管障害,血栓塞栓症など)にあたる場合は,血漿浄化療法を考える。3つの血漿浄化療法で有効性に有意な差はない。

    【フィッシャー症候群】

    典型例の予後は良好で,自然経過で半年後にはほぼ症状が消失する。治療が回復を早めるエビデンスはない。四肢の脱力などギラン・バレー症候群を合併する場合は,ギラン・バレー症候群と同様の治療を行う。ビッカースタッフ型脳幹脳炎の場合もエビデンスはないが,IVIgや血漿浄化療法を行う。

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