【てんかん重積発作の古くて新しい病態】
「てんかん」と「痙攣」はこれまで混同・誤用されてきた1)。痙攣はてんかん発作において確かに多い,典型的な症状のひとつではあるが,痙攣という語はほかにも多様な症状を含み,様々なほかの疾患でもみられるものである。そして,強直間代発作などを痙攣発作と呼ぶだけでなく,必ずしも痙攣を伴わないてんかん発作や急性症候性発作まで「痙攣発作」と称したり,てんかん重積のことを「痙攣重積」と称することも長らく常態化している。
非痙攣性てんかん重積(non-convulsive status epilepticus:NCSE)はてんかん重積の中で痙攣を伴わないものを指す。決して新しい概念というわけではないが,集中治療室などにおける脳波モニタリングの普及や,意識障害患者におけるNCSEの少なからぬ有病率の報告2)なども相まって,近年特に注目度が高まっている。痙攣がないことからてんかん性の病態が想起されなかったり,「痙攣発作」を治療できたとされたあとに遷延する意識障害がNCSEである場合があるなど,念頭に置いていないと見逃されうる。また,診断には脳波が必須であるが,その判読は必ずしも容易ではない。
NCSEの診断・治療が普及していくこと,また,それにつれ「てんかん」の正しい認識が広まっていくことが望まれる。
【文献】
1)井上有史:臨評価. 2011;38(4):895-8.
2)Towne AR, et al:Neurology. 2000;54(2):340-5.
【解説】
宮地洋輔 横浜市立大学脳神経内科・脳卒中科
園生雅弘 帝京大学脳神経内科主任教授